コロナ禍でさらに厳しいミドル転職 後悔したくない人へ 書き込み式で準備できる「ノート」

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   新型コロナウイルスの感染拡大で、産業界は様相が一変し、業績悪化に苦しむ企業が少なくない。信用調査会社の調べだと、2020年1~6月に早期・希望退職者を募集した上場企業は前年同期と比べて2倍超になった。「沈む船」から、どうやって降りるか悩んでいる人もいるだろう。

   本書「35歳からの後悔しない転職ノート」は、人材採用に長く携わった著者が、転職市場の知られざる実情を明かし、転職に臨む人たち、また臨まざるを得ない人たちが「納得いく働き方を見つける」ための参考書として上梓した一冊。

「35歳からの後悔しない転職ノート」(黒田真行著)大和書房
  • 35歳からの職探しは、その後の人生について綿密に考えてから……
    35歳からの職探しは、その後の人生について綿密に考えてから……
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「求人ありき」のサービスからの転換

   著者の黒田真行さんは、株式会社リクルートで求人情報誌や転職情報誌の関西版編集長を経て、2005年から8年間、転職サイト「リクナビNWXT」編集長を務めた。2014年に「ミドル世代の適正なマッチング」を目指して会社を設立。35歳以上に特化した転職支援サービスを運営している。

   著者が35歳前後のミドル世代専門に転職支援を行うことにした理由は、この世代の転職となると実力に関係なく年齢だけで不採用になりがちなためだったという。

   そこで新しいタイプのサービスとして、従来型の「求人ありき」ではなく、転職希望者に職務経歴を登録してもらい、それを経営者に提案するやり方を進めてきた。

   この新方式による事業で、求人頼りのサービスで不可能だった需要の掘り起こしができるようになった。その一方で「求職者側に、ミドル転職の難しさがまだまだ知られていない、というもどかしさをずうっと感じてきた」と著者。そのことが、本書を出版した動機の一つだ。

ミドル転職=バラ色は幻想だ!

   2020年になって新型コロナの感染拡大が起こるまでは、少子高齢化による人手不足がいわれて、人材をめぐっては長く「売り手市場」が続いていたが、じつは、そうした間でもミドル世代の転職は簡単ではなかったという。

   「『35歳転職限界説』はもう古い。今の時代、40歳まで転職はできる」あるいは「中高年世代によっての転職のチャンスが拡大している」というような内容の文言が報道や転職サイトでみられたが、現実を述べたものではなかった。新卒採用をはじめとした若手人材の売り手市場は確かに進んでいたが、ミドルはその埒外。企業の新規事業やスタートアップが増え、一部スペシャリストで年齢不問の採用が増加しており、それが誇張されたものだった。それが「年齢の壁はすべて崩れた」などと「実態とかけ離れたニュースが独り歩きしていった」という。

   募集で年齢制限をかけることは法律で禁止されている。しかし、実際には、暗黙の年齢制限があった。

「ホワイトカラーやエンジニアを対象とした、正社員の中途採用市場で募集されている人材は、大企業やベンチャー企業ではせいぜい32歳まで。もっとリアルなところでいえば、30歳までという年齢制限があることも一般的。それを過ぎたら、よほど専門性が高い人でないと採用プロセスには進んでいかない」

   とはいえ、転職希望者はそうしたことを承知で中途採用市場にチャレンジするわけではない。甘い言葉に誘われ、不用意に会社を辞めて転職をしようとしながら、まったく予想もしなかった苦労を経験することになった人も少なくないという。

コロナで加速するリストラ

   そういった状況であれば、ミドル世代になって転職などしなくてもいいのではないか――。そんな意見が出るのも当然だろうが、現代ではミドル世代になって転職を考えねばならない事情も、一方にはあるという。その一つが、企業が近年、強力に進めている希望退職という名のリストラだ。

   IT化や少子高齢化、働き方改革に合わせてた合理化のため、企業では近年、構造改革を進める動きが加速。その一環として、40~50代の中高年を対象とした希望退職の募集が増えている。

   中高年従業員の人件費を減らすことで、会社としては固定費を大きく削減できる。コロナ禍でこの動きが加速しているが、過剰雇用のリストラ予備軍とされる「雇用保蔵者」が400万人以上いるとされ、この動きはしばらくやみそうににない。

   そして、このリストラ対象者はどんどん低年齢化しているのが実情。「かつては50歳以上だった希望退職者の対象が、45歳以上に、さらに最近では40歳以上というケースも珍しいものではなくなってきた」

   現代の「ミドルの転職」は、決して見通しが明るいものではないにもかかわらず、さまざまな事情の変化で、転職せざるを得ない状況になる可能性が高い。「いざ、転職」になった場合には、目先のブランドイメージにとらわれ、成功体験のプライドを前面にして臨むのは非常に危険だ。35歳からの職探しでは、生涯本当に必要なお金がいくらなど、その後の人生について綿密に考えていくべきと著者は説く。

   本書では、「書き込んでいく」だけで自分の現在地を把握し、理想の仕事が何かを探ることができるワークシートを多数収録。自分の業績やアピールポイントなどをシビアにとらえられる仕様になっている。

「35歳からの後悔しない転職ノート」
黒田真行著
大和書房
税別1500円

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