新型コロナウイルスが猛威をふるい、多くの企業がテレワークを進めるなど、働き方改革を余儀なくされている。そんななか、20代の社員から見て、ワークライフバランスがよく、自由な働き方ができて風通しのよい企業はどこなのか――。
就職・転職のジョブマーケット・プラットフォーム「OpenWork」を運営するオープンワークが20代の会員ユーザーの口コミ投稿から調査した「20代が選ぶ、自由でフラットな企業ランキング30位」を2020年8月3日に発表した。
5位は「あそびを仕事に、オタクを仕事に」いろはにぽぺと
「OpenWork」は、主に社会人の会員ユーザーが自分の勤務している企業や官庁などの口コミ情報を投稿する国内最大規模のクチコミサイトだ。会員数は約340万人(2020年1月時点)という。「年収・待遇」「職場環境」「社員の士気」「社員の育成」「風通しの良さ」など8つの項目で、自分の会社を評価して投稿する。
今回の調査では、20代社員からの投稿に限定し、テレワークなど遠隔でのコミュニケーションでも重要となる「風通しの良さ」のキーワードを中心に選んだ。そして、8項目の総合スコアと合わせ、自由な働き方を提供しながら風通しも良い企業のランキングを作成した。
その結果、1位はグループウェア「サイボウズ Office」シリーズなどを手がけるソフトウエア開発のサイボウズ、2位はソーシャル経済メディア「NewsPicks」や経済情報サービス「SPEEDA」などを提供する情報関連のユーザベース、3位はコンサルタントやIT人材の転職支援のアクシスコンサルティング、4位は長野県上田市に本社を置く電気計測器メーカーの日置電機となった。5位は「あそびを仕事に、オタクを仕事に」をミッションとするオタク系クリエイター・エンジニア集団のいろはにぽぺと、6位はWebマーケティングのギャプライズ、7位はANAグループの航空セールスと旅行事業を行なうANAセールス、8位はGMOインターネットグループでクラウド・ホスティング事業を行うGMOクラウド、9位は起業家・フリーランス支援事業のHajimari(ハジマリ)、10位はホテル・レストラン・ウェディングなどの事業を行うPlan・Do・See(プラン・ドゥ・ シー)いう結果になった。また、官公庁では唯一、特許庁が30位にランクインした=別表1、2参照。
今回のランキングで1位、2位となったサイボウズとユーザベースは、ユニークな働き方が常に注目されている企業だ。
ランクイン企業の社員クチコミを見ると、制度を形骸化させずに実際に活用している声が多く、組織に浸透した自由な働き方や、制度利用のしやすさが満足度を高めていることがわかる。両社の場合はこんな声がある。
サイボウズ
「在宅勤務や時間をずらして働く、好きな場所で働くなどはとても自由です。どの会議室にもリモートで接続できるのと、オンラインに情報を集約する文化のため在宅による情報格差はほぼないと言えます」(エンジニア、男性)
ユーザベース
「フルフレックス、フルリモートの会社のため、日本国内や海外でフレキシブルに働くことができる。お子さんが熱を出した際など、リモート勤務が自分の意思でできる会社。子育てや家事などとの両立もしやすく、3児の母も数名いる」(企画、女性)
完全裁量制だから、コロナ禍でも混乱なし!
また、3位以下の企業からも、こんな意見が聞かれた。
アクシスコンサルティング
「自身でKPI、KGI(編集部注:業績の評価指数や目標達成指数)を逆算して、アポイントを入れているため、優先したいプライベートの用事があれば、柔軟に調整可能。テレワーク環境も整備されているため、育児・介護等で数日在宅ワークのみで乗り切ることも可能」(キャリアコンサルタント、男性)
日本アイ・ビー・エム システムズ・エンジニアリング
「完全裁量制、e-work完備のため非常に調整が利く。だから昨今のコロナ騒動でも目立った混乱はなかった。プロジェクトにさえ恵まれれば休みも取りやすい。年1回以上の海外旅行を取る社員も多く、取得時期も仕事との折り合いさえつけられればとても柔軟」(ITスペシャリスト、女性)
シスコシステムズ
「ワークライフバランスは非常に取れていると思う。テレワークは昔から浸透しており、在宅、カフェ、どこからでも仕事は可能。また家庭の事情に合わせて仕事も柔軟に調整可能。働く環境としてはトップレベルで恵まれていると思う」(営業、男性)
コスモスイニシア
「ワークスタイルイノベーション休暇という半期に有給を連続で取得し、公休と合わせて5連休以上の休暇を義務付けられていた。その際に会社から特別手当ももらえる」(設計、男性)
Booking.com Consulting Services Japan
「そもそも残業をよしとする文化ではないため、定時退社が当たり前でした。入社したての新人であっても、定時になると時間だよと言って帰されます。定時内に終わらない仕事を新人に振る上司が怒られる、そんなカルチャーのため、オンとオフのメリハリはかなりつけやすかったです。ワーキングマザーもいましたが、フレキシブルな働き方もどんどん認められるようになっていっていました」(セールス、女性)
30位特許庁「年次に関わらず論理的に対話できる風土」
さて、20代に人気がある「上下関係がフラットな組織」にはマネジメントのコミットが必要だ。フラットで風通しのよい組織には、若手社員が発言しやすい風土がある。
今回ランクインした企業の社員クチコミにも、「上下関係がない」といった声が多く見られた。また、経営陣やマネジャーがどれだけ上下の境をなくし、若手の意見を尊重することに努力をしているかも社員クチコミからうかがえる。こんな例があげられる。
サイボウズ
「年次や勤続年数に関わらず、誰でも発言できる環境があるのはとても恵まれていると思う。風通しがよくオープンで、上下関係を感じさせない。リモートワークなど働き方の面での取り組みが先進的で、在宅勤務を交えつつのびのびと働けている」(マーケティング、女性)
ユーザベース
「オープンでフラットを体現している。また非常にボトムアップである。口だけのボトムアップ、オープン、フラットというベンチャー企業は多いが、その大半は内実が伴っていないなか、トップがその企業文化にとても深くコミットしているため、少なくとも私の部署では本当に上記カルチャーが体現されている。自分の意見が求められ、それが業務に反映される。それがあるから、逆に自分自身の業務に言い訳ができず、コミットメントが高くなる。また、トップは上層部の決定や方針、今の事業の進捗についてもメンバーに正しく伝えようとしてくれる」(セールス、女性)
アクシスコンサルティング
「トップダウンと、ボトムアップが融合しており、トップからの明確なビジョンに加えて、ボトムからの意見に聞く耳を持つ柔軟性も持つ」(キャリアアドバイザー、男性)
Hajimari
「若いメンバーが多く活気がある。少し体育会系の雰囲気はあるが、かなりフラットな組織で年齢や社歴に関係なく意見を交わしている。メンバーはそれぞれ自立しており、がちがちな管理ということもない。働きやすいやすいように経営陣が意識して環境をつくっていると感じる」(営業部、男性)
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン・インコーポレイテッド
「社員の成長に対するコミットメントは強く、フィードバックを与えるo貰う文化がどの階層にも定着している。リーダーシップチームの間では部下を活躍させるためには、殻を破ってもらうためには、どのようなフィードバックを与えればよいかといった指導方法に関する議論が常になされている。うまく活躍できていない人がいた場合は、パフォーマンスを改善させるための協力体制が築かれるため、UP or OUTの文化はあるが、OUTにさせないための機会は誰にでも与えられる文化がある」(コンサルタント、男性)
特許庁
「個々人が特許性の判断を行う権限を持っていることもあり、比較的個人の考えが尊重される風土がある。審査部の職員はほとんどが審査官であるため、論理的に対話をすれば年次に関わらず聞き入れてくれる人も中にはおり、風通しの良い職場である」(審査官、男性)
(福田和郎)