伸ばせる能力であることが支持される
結果的に、EQは大きなブームとなり、高山さんが経営するEQJapanの個別診断テスト受験者は30万人を超え、導入企業も3000社に達します。これは、EQのロジックがわかりやすかったことに加えて、伸ばせる能力であることが支持されたものと考えられます。
「ある事例を紹介します。商談に向かうためタクシーに乗りました。大きな商談で、『よし、やるぞ』と気持ちを高め、気合を入れて社を出ました。ところが、乗ったタクシーの運転手さんの話が暗いのです。『景気はどう、よくないでしょう』から始まり、『友達もリストラされた』『景気が悪いしノルマは厳しい』。訪問先に着くころには、高揚していた気持ちはすっかり沈んでいました。
その日のプレゼンは見事に大失敗。感情のエネルギーをすっかり運転手さんに奪われてしまい、短時問では感情を調整し高めることができなかったのです」
と高山さん。
こういったタイプの人はどこにでもいるものです。きっと一人や二人は思い当たる人がいるでしょう。
高山さんは
「一方では、元気を与えてくれる人もいます。気分が落ち込んでいても、会うとホッとし、話すほどに元気がわいてきます。いったい何か違うのでしょう。実は、一番の違いは使っている『言葉』にあります。『明るい言葉』は自分の気持ちを明るくし、周囲を明るくすることができます」
「風土改革の際に、難しいコンサルティングを導入しても運用ができません。それよりも、『明るい言葉を使う』『挨拶をきっちりする』『元気な言葉で会話をする』、このような単純でわかりやすい施策のほうが組織は活性化するものです。とても簡単な方法ですから、試してみてください」
と、オススメします。
なお、EQブームのあとに飛躍した理論が乱立しました。いまブームのアンガーマネジメントも、EQ理論がベースになったものです。人間関係の問題はすべてEQに帰結します。人が行動する際、影響を与えるのはEQ(感情)だからです。なお、筆者は、いまでもEQ理論の可能性を感じている一人です。EQ理論に関心のある方には良著となることでしょう。(尾藤克之)