GAFAのようなイノベーションを実現する会社は「3階建て」構造だ!

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   現代は、「イノベーション」をモノにした企業には成長が約束される。このことは広く理解されているはずだが、企業の中でイノベーションや新規事業の創出を任されると尻込みする人が多いという。

   本書「御社の新規事業はなぜ失敗するのか? 企業発イノベーションの科学」は、日本の企業の多くが、イノベーションに不向きな体制や構造になっているため、担当に指名されても働きがいが感じられない現状があることを指摘。日本企業の新規事業が拡大せず、終わってしまうのは、こうした構造的問題があるためで、その対策を解説している。

「御社の新規事業はなぜ失敗するのか? 企業発イノベーションの科学」(田所雅之)光文社
  • 「高層」はいらない、3階建てがあればいい…
    「高層」はいらない、3階建てがあればいい…
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日本企業の新規事業が失敗するのは組織の構造に問題

   著者の田所雅之さんは、外資系のコンサルティングファームで経営戦略コンサルティングなどに従事したのち独立し、日本でスタートアップ3社、米国でECプラットフォームのスタートアップを起業した経験を持つ。現在は、スタートアップを支援する会社の社長で、国内外2000以上のスタートアップ企業や、大企業の新規事業を支援している。

   現代でイノベーションや新規事業を次々に成功させている、先進的な企業の代表的存在といえば、GAFAと呼ばれる米国のIT企業4社だろう。米国には、GAFAのほかにも持続的にイノベーションを成功させている企業は少なくない。

   一方、日本の企業をみると、そういったイノベーションを実現している例は非常に少ない。それはどうしてなのか――。

   著者によれば、それは「組織の構造に問題がある」ため。日本の企業は、デジタル化、IT化などの変革を経て、なお今後も変革が確実視されていても、ほとんどが従来型のまま「1階建て構造」という。

   イノベーション専任の部門が独立しておらず、新規事業の開発も、今の会社を支えている既存事業のコアビジネスと一体型の組織体制。これでは各製品、各サービスの担当部署で新たな事業を行うにしても、マネージャーたちは、確実な売り上げを出している既存事業のPL(Profit and Loss=損益)評価基準にとらわれるばかり。そして、新規事業は具体化しても、すぐに利益を生むわけではないので「遊び」と認識され、いつの間にか消滅してしまう。

   こうしたことが繰り返されているうちに「イノベーションへの活力が奪われてしまい、新たなビジネスのタネが摘み取られてしまう」と著者は指摘する。

必要なのは「破壊的イノベーション」

   イノベーションを起こし続ける企業の組織体制として著者が提案するのは「3階建て構造」だ。既存事業であるコアビジネスを1階に置き、2階には「新規事業」に取り組む部門を配す。そして3階で「イノベーション」を手がける。各部門には、それぞれ異なる評価基準を設け、それぞれで働く従業員が、仕事の方向性きちんと把握できる体制にする。

   2階の「新規事業」と3階の「イノベーション」の違いはこうだ。2階では、既存商品に関連した事業や、新たにできつつある市場に対応した、いわば現実的な事業を行うのに対し、3階は「破壊的イノベーション」だ。

   2階の「新規事業」はたとえば、これまで液晶テレビを高画質化した「4K」や、ガソリンで走っていた自動車をハイブリッド化することなどだが、日本の企業は、短期的は利益に目を奪われ、こうした新規事業に集中しがち。

   しかし、この場合はしばしば顧客が望んでいないものが事業化され、価格が高騰しそっぽを向かれてしまいかねない。

   これに対し、破壊的イノベーションは、まったく新しい、未来の市場を生み出す行為。たとえば、動画配信の例が挙げられる。誰もが容易に動画を扱えるようになり、破壊的イノベーションで開拓された市場はその後、持続的イノベーションにより成長をもたらしている。

   ただ、この3階の事業では失敗も多い。3階建て構造では、組織をはっきりと分離しKPI(重要業績評価指標)を分け、3階の場合は「空振り」ばかりでも評価される仕組みにしなければならない。

   3階の「破壊的イノベーション」で市場が開拓できたら、事業を2階に移管。市場ができあがり成熟したときにはさらに1階に移しコアビジネスにする。GAFAが実践しているのは、こういったサイクルだという。

「御社の新規事業はなぜ失敗するのか? 企業発イノベーションの科学」
田所雅之
光文社
税別840円

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