「うそみたいな本当の話をさせていただきたい」――。大阪府の吉村洋文知事が突然開いた記者会見で、ポビドンヨードを使ったうがい薬で「コロナの陽性者が減っていく」という驚きの研究結果を発表しました。
あまりの反響の大きさに、翌日あわてて「うがい薬は予防薬でも治療薬でもない」と釈明しましたが、すでに後の祭り。うがい薬は買い占められ、ネットでは高値で「転売」の大混乱。国内では「イソジン吉村」がすっかり定着したようですが、果たして、海外メディアの「吉村評」はどうだったのでしょうか?
米通信社は「そんなうまい話、あるわけないだろう!?」
それにしても、今回の「イソジン騒動」は、「まさか、こんなことが?」という驚きの連続でした。最初は「まさか、うがい薬がコロナに効くなんて!」という疑問に近い驚き。次に、「まさか、うがい薬を買い占める人たちがいるなんて!」。さらに、「まさか、速攻で『コロナに効くとは言っていない』と否定するなんて!」と。メディアの評価や判断も二転三転とめまぐるしい展開でしたが、海外メディアは一貫して批判的なトーンで報じていました。
Too Good to Be True? Osaka Says Gargling Formula Can Beat Virus
(話がうますぎる? 大阪府は、うがいがコロナウイルスをやっつける処方薬だと発表した:ブルームバーグ通信)
gargling:うがい
真っ先に報じたのが、米国のブルームバーグ通信でした。この記事、何と言っても「Too Good to Be True?」という見出しが秀逸です。直訳すると「good」すぎて「本当かどうか疑わしい」という意味ですが、「できすぎた話」「眉つばモノ」とも訳されます。
「そんなうまい話があるのか?(あるわけないだろう)」といったところでしょうか。
記事では「眉つばモノ」とする根拠として、「たった41人という限られた実験データに基づいた見解」にすぎず、「広範囲でランダムに実験したデータに基づいて判断する」という「the gold standard (黄金ルール)」を欠いたものだと批判しています。
よりストレートに、政治家の介入を批判したのが米紙ワシントンポストです。AP通信が発した記事を引用して、次のように述べています。
Japan governor touts gargling product for virus.
(日本の政治家が、コロナウイルス対策としてうがい薬を押し売りしている:米ワシントンポスト紙)
tout:押し売りする、しつこく売り込む
「tout」は「うるさく勧誘する」という動詞で、「ダフ屋をやる」とか「転売する」という意味もあるそうです。
記事では「日本の政治家が、コロナ対策にうがい薬を『押し売り』して疑わしいという批判を招いている」と伝えています。政治家が、特に医療に関わる分野で特定の商品(や薬)の使用を推奨することの違和感をハッキリと伝えていて、その危険さを想定させる内容です。
「イソジン騒動」をめぐる報道では、玉石混合の内容が飛び交った日本国内と比べて、終始一貫して批判的なトーンで報じた海外メディアとの違いが印象的でした。