エルメス「バーキン」の「真実」
また、持ち物マウンティングも日常茶飯事。丸の内OLのブランドバッグ所持率は高く、100万円以上するエルメスの「バーキン」を通勤バッグにしている人も珍しくありません。隣の部のE代もエルメス愛用者の一人で、「バーキン」シリーズを何個も持っているとの話でした。
ある週末、銀座に買い物に出かけた時に、そのE代が銀座の区立住宅から出てくる姿を目撃しました。E代は「銀座に住んでいる」ということで、居住地マウンティング合戦でも、上位に位置していると認識されています。E代は私の顔を見た瞬間、気まずそうに別の道へと姿を消しました。
翌日、廊下でE代に会ったところ、いきなり近づいてきて、「きのう私を見たことは、内密にしててね」と言います。どうやら、「区立住宅に住んでいるのを見られた」ことが引っかかっているらしいのです。
「そんなのみんな気にしないよ」と言ったものの、「ミカさんは何もわかってない! そんなの知られたら、私の立場ないから!」と、かなりセンシティブになっている様子。区立住宅とはいっても銀座なので、家賃はそれほど安くなく、毎月の家賃にエルメスのバッグとなると、「経済的に大丈夫なのだろうか」と余計な心配をしてしまいます。しかしE代は、「住むところを切り詰めてでも、エルメスは持ちたい」と主張します。
とはいえ、そもそもエルメスの「バーキン」は、女優のジェーン・バーキンが、使い込んだカゴバッグにモノをあふれさせているのを見かねたエルメスの社長が、ポケット付きのバッグを作ってあげたという、庶民的な経緯で誕生したバッグです。それが本来の経緯とは真逆に、マウンティング合戦の象徴アイテムになっているとしたら、当のバーキンも困惑してしまうのでは...... 。私はそう思うわけです。
もうおわかりですね。
「マウンティング」がいかに不毛なものか、実感していただけたのではないでしょうか。居住地も「住めば都」。持ち物も、使い心地が良くて愛用しているものが、自分にとって一番良い持ち物のはずです。人との比較で価値を計るのではなく、自分の肌感覚を信じたいですね。
【きょうの格言】マウンティングほど不毛な争いはない 信じられるのは自分の肌感覚だ!
それでは、また次回。(丸ノ内ミカ)