人手不足を補うことが目的だったロボット開発が、新型コロナウイルスに見舞われてからは、その感染防止が主眼となって、ますます多くの企業がこの領域のテクノロジー開発に取り組むようになっている。
すでに飲食店のホールで料理を運ぶロボットが実用化されているほか、お客の注文を受けられるロボットや、フードデリバリーが担えるロボットが開発されており、感染を防ぐための「非接触化」「非対面化」への動きが進んでいる。
進む「非接触」「非対面」
東京大学情報システム工学研究室出身で元グーグルのロボットエンジニアの3人が集まり、2019年に創業したロボット開発企業、スマイルロボティクス株式会社(東京都文京区)は、飲食店などで、食べ終わった後に食器などを下げる「自動下膳ロボット」の開発、製品化に取り組んでいる。
同社は、将来的には「配膳」にも対応できるようにし、さらに「非接触化」「非対面化」のニーズに応えたいとしている。2020年7月31日の発表。
スマイルロボティクスのロボットの大きな特徴は、下膳の作業ができる「モバイルマニピュレーター型」であること。「マニピュレータ」はロボットアームのことで、「モバイルマニピュレーター」は言い換えれば「自律走行型ロボットアーム」だ。
高度なロボット制御技術・ディープラーニング技術を活用。今のところは、飲食店のホールなどでアームのない搬送ロボットにはできない、「片付け」のオペレーションを担える「モバイルマニピュレーター型自動下膳ロボット」を開発している。
スマイルロボティクスはこのほど、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の2020年度「研究開発型スタートアップ支援事業」(NEDO STS事業)に採択された。また、NEDO認定ベンチャーキャピタル(VC)のANRIから、新たに追加の資金調達を完了したことも併せて明らかにした。
NEDOから発表された支援交付決定先一覧では、他にロボティクス領域の案件はなく、同社は「ロボットスタートアップ」として唯一の採択という。
このNEDOの支援事業の助成金(最大7000万円)とANRIなどから新たに追加で調達した資金で、ソフトウエアとハードウエアの両方でエンジニアの採用を強化し、モバイルマニピュレーターの研究開発および実証実験を一気に加速させたい意向。あわせて、今後についてコロナ禍で高まっている「社会的な非対面化ニーズ・自動化ニーズ」を受け、これまでの「下膳」に加えて「配膳」なども含む「運搬作業全般」へのロボット対応や、飲食店以外の施設でも「つかむ・はこぶ」機能を非対面で行えるようなロボットの開発を急ピッチで進める。
小倉崇社長は、「新型コロナ感染症により世界中で非対面化が叫ばれるなか、消費者や事業者の双方に安心・安全を提供できるモバイルマニピュレーターは、飲食店をはじめ接客業全般にご活用いただけるものと考えている」と話している。