私たちの周りには「知っているけど、親しくはない人」たちであふれています。そんな人と意図せずして2人きりになり、ちょっとした気まずさを覚えることはよくあります。そんなとき、ありふれた天気の話や最近のニュースなど、ただ「間を埋めるための雑談」だけしていていいのでしょうか。
たかが雑談、されど雑談。仕事がデキる人たちは雑談がいかに自分をアピールするための有力な機会であるかを知っています。だからこそ、彼らはしっかりと事前に「おもしろいネタ」を仕込み、雑談を武器にしているのです。
「武器になる雑談力」(本間立平著)きずな出版
クライアントに「おみやげ」を買ってもらう?
ある日、クライアントとの打ち合わせが終わると、小さなお菓子を営業マンに手渡している光景を目にしました。それは、クライアントの地元のお菓子でした。帰省した際、営業マンのためにわざわざ買ってきたくれたのです。この状況からは何が見えてくるのでしょうか――。
「しかし、クライアントにおみやげを『あげる』ならまだしも、『もらう』のはあまり聞かない話です。そこで帰り道、『あのおみやげは、なにかのお返しですか?』と聞きました。すると、営業マンはこう答えたのです。『あれは、クライアントのサプライズ。驚いたよ。ただこの前、会話の流れで、『それ、食べたことないです』って言っちゃったんだよね......。だから、オレが〈催促〉したようなものなんだけど(苦笑)」
著者の本間立平さんは、そう言います。
「クライアントにおみやげを『ねだる』......なんて奇妙なことをするのかと驚きました。しかし思い起こせば、おみやげを渡すときのクライアントはうれしそうでした。そして営業が喜びを露わにしたことで、その場は非常にいい雰囲気になりました。結果的に、営業マンの『おねだり』が、クライアントとの関係を、プラスの方向に動かしたことは否めないのです」
しかし、どうして「おみやげをねだること」が、良好な関係づくりにつながるのでしょうか。本間さんは、小学校の先生がいたずらっ子に説教したときのひと言を、いまでも思い出すといいます。それは、「人にされて嫌なことはするな」ということ。これは「人にされてうれしいことをしろ」の意味に変換できます。気配りができる人は「人にされて、うれしいこと」で関係を構築しているのです。