食糧輸出国の南米では別のバッタが大発生中だ
――サバクトビバッタが世界経済に与える影響(食糧・インフラ・人的被害などなど)はどのようなものが考えられますか?
斉藤誠さん「FAOによると、作物被害を受けた東アフリカでは2500万人が食糧危機に直面していますが、2020年の世界の穀物生産量は前年度比3.0%増と予測されています。食糧輸入国のアフリカや中近東で作物被害が出ても、その地域の人々の生活への被害は深刻ですが、世界経済に及ぼす影響は小さいといえます。
しかし、最近はインドやブラジル、アルゼンチンといった食糧の輸出大国でバッタが大発生(南米ではミナミアメリカバッタ)しているので、これらの国で作物被害が拡大して輸出制限を打ち出すことになれば、今後、国際食品価格を押し上げる要因となり得るでしょう。
――このサバクトビバッタの被害を終息させるには、各国はどうしたらよいのでしょうか? また、この被害はいつ、どのような形で終わると考えられますか?
斉藤誠さん「国際社会はバッタの繁殖地でありながら十分な防除活動が行えない国々への支援(資金、食糧支援など)を行う必要があります。バッタを減らすには殺虫剤をまくのが一般的で、広がって飛んでいる成虫にまくよりも、密集している卵や幼虫の群れにまいた方が効果的とされています。 したがって、監視体制を整えて繁殖地で防除を行えば、バッタを制圧することはできますが、一度大量発生を許してしまうと戦いの長期化は避けられません。今回のケースの終息時期はわかりませんが、過去50年間ではアウトブレイク(爆発的発生)するとピークは2~3年続いています」
(福田和郎)