世界中で新型コロナウイルスが猛威をふるっているなか、勝るとも劣らない脅威が東アフリカと南アジアを襲っている。農作物を食い尽くす「世界最凶」といわれる昆虫、サバクトビバッタの大群だ。
古代エジプトの時代からたびたび大発生して人々を苦しめきたバッタだが、現在、大群がアフリカからアラビア半島を通過、イラン、パキスタンを経てインドに達している。行く先々で農作物や牧草を食い荒らすため、通過された国々は食糧危機に陥っている。
ニッセイ基礎研究所の研究員が「蝗害(こうがい=バッタの食害)がコロナに次ぐ新たなリスクに」という調査リポートをまとめた。いったい世界経済にどんな影響を与えるのか、バッタは日本にまでくるのか? J‐CASTニュース会社ウォッチ編集部は研究員を取材した。
大群が1日150キロを飛行、あらゆる食糧を食べ尽くす
調査をまとめたのは、ニッセイ基礎研究所・経済研究部准主任研究員の斉藤誠さんだ。2020年7月14日に「インドにバッタの大群侵入、蝗害がコロナに続く新たなリスクに」というタイトルのリポートを発表した。
それによると、サバクトビバッタは体長約5センチで、通常は単独で行動する「孤独相」と呼ばれて人類の脅威にはならない。ところが世代交代が早い。3か月ごとに新しい世代となる。繁殖に適した条件(水やエサになる植生)が与えられると、半年で数が400倍に増え、1年後には16万倍までに増殖する場合がある。こうなると、手に負えない大群となる。
大群となったバッタは集団行動する「群生相」と呼ばれる体に変異するのだ。群生相となったバッタは、まるで別の種類の昆虫になったように体色が黒くなり、翅が長くなって遠くまで飛べるようになるなど見た目も変貌する。食欲も旺盛となって繁殖力が勢いを増す。群れは1日に最大 130~150キロメートル以上も飛行し、自身の体重(成虫は約2グラム)に相当する植物を食べる。
米国農務省によると、1平方キロメートルほどの小さな群れ(4000万匹以上)でも、1日に約 3万5000人分の食料と同じ量を食べる。野生の植物だけではなく、あらゆる農作物が食べ尽くされ、その地域の食料問題に壊滅的な影響をもたらす。