韓国のある植物園に置かれていた彫刻像が、爆発寸前の日韓関係の導火線に火をつけそうだ。慰安婦の少女像に土下座する安倍晋三首相を描いているからだ。
日本政府は「外交的に非礼だ。日韓関係に決定的な影響を与える」とカンカン。一方、韓国内のSNSでは「この像のミニュチアを作り全土に配りたい」という共感の声も上がり、反日に拍車をかけかねない。
そもそもこの像は4年前からあり、何の話題にもならなかったしろもの。なぜ、いきなり脚光を浴びるようになったのか。韓国紙で読み解くと――。
「我々がもういいと言うまで土下座すれば許しを得られる」
この「安倍謝罪像」が置かれているのは、江原道平昌郡(カンウォンド・ピョンチャングン)の平昌自生植物園だ。2016年から置かれており、話題にも何の話題にもならなかったが、2020年7月25日付の地元紙、京郷新聞が報じてから韓国中に知れ渡った。
朝鮮日報(7月27日付)「『少女像の前で贖罪する安倍像』をどう思いますか?」によると、像の名前は「永遠の贖罪」(A heartfelt apology)で、高さ1.5メートルの座っている従軍慰安婦の少女像の前に、身長180センチメートルの安倍首相の像がひざまずいて謝罪している。
植物園のキム・チャンニョル園長が私費で、彫刻家ワン・グァンヒョン氏に制作を頼んだ。ワン・グァンヒョン氏は、朝鮮日報の取材にこう語っている。
「贖罪を知らない日本は作品のようにぬかずいて、我々がもういいと言うまで贖罪してはじめて許しを考えることができる、ということを形象化したに安倍首相に反省を促す作品だ」
また、キム園長も、
「慰安婦のハルモニ(おばあさん)たちがきちんと受けるべき贖罪を作品で表現した」
と説明し、8月10日に大々的に国会議員を招いて除幕式のセレモニーを行うと語った。
4年前から公開されているのに、今さら除幕式もないものだが、地元紙に取り上げられたことをいいことに、客寄せの宣伝効果を狙ったのは明らかだ。
ところが、この「安倍謝罪像」に日本側が激怒した。菅義偉官房長官が7月28日、
「事実とすれば国際儀礼上許されない。日韓関係に決定的な影響を与えることになる」
と強い口調で警告したのだった。
自民党の中山泰秀外交部会長も同日、
「常識で考えられない異常な行為だ。一般人の取り組みだとしても看過できない。韓国政府にも国内での監督責任が生じているのではないか」
と、怒りの矛先を韓国政府に向けた。