生まれ変わったApplift 「透明性」を武器にアドテク市場に挑む 相田傑社長に聞く

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   ドイツ・ベルリンのモバイルアドテクノロジー企業、Applift(アップリフト)は2015年に日本に進出。5年目の節目を迎えた2020年、今後に予想される市場拡大の波をしっかりとらえようと、体制を刷新して新たに船出した。

   舵取り役を任されたのは、日本国内でウェブを中心にしたマーケティング部門で豊かな経験を持つ相田傑(あいだ・すぐる)さん。4月にAppliftの日本法人、Applift Japan K.K.(東京都中央区)の社長に就任。新しいビジネスに挑む思いや決意を聞いた。

  • 「会社としてもリスタートのタイミング。一緒にチャレンジしたい」と話すApplift Japan K.K.の相田傑社長
    「会社としてもリスタートのタイミング。一緒にチャレンジしたい」と話すApplift Japan K.K.の相田傑社長
  • 「会社としてもリスタートのタイミング。一緒にチャレンジしたい」と話すApplift Japan K.K.の相田傑社長

グローバル新体制での船出「ゼロからだと思っている」

   相田傑さんは、新年度となった4月1日に就任。「さあ、やるぞ!」と意気込みスタートしたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で最初の1か月間は、日本法人やドイツ本社の状況について学んで過ごした。

   折しも、Appliftは5月5日、関係会社でSSP(Supply Side Platform、媒体のための広告プラットフォームを提供している、独PubNative(パブネイティブ)と、米国のモバイルマーケティングプラットフォーム、Verve(バーブ)と合併し、「Verve Group」の設立を発表。広告主向けのDemand Sideのソリューションを提供しているAppliftと、媒体向け事業のPubNative、それにロケーションデータを使った消費者向けモバイル広告などを得意とするVerveが、いわば三位一体となることで、総合的また立体的、そしてグローバルな事業展開が可能になった。

   その事業を日本で具現化していく相田さんは、

「会社としてもリスタートのタイミングでもあるので、これを機に一緒にチャレンジしたい」

と、心躍らせている。

   「6月からやっと動けるようになりました」と相田さん。笑顔でそう語る様子には、コロナによる出遅れにも屈託はない。

   Appliftの創業は2012年。日本市場を有望とみて、3年後には進出を果たし、2016年にApplift Japan K.K.を設立した。相田さんは3代目の社長だ。

   ヘッドハンティングでの転職。「英語もわからないし、面接で受からないのではと考えていたのですが、長くやらせていただいている広告のことは、本社ともしっかりコミュニケーションをとることができた。それが決め手になったようです」と振り返る。

   Appliftによると、日本のモバイルアドテク市場の規模は2020年の7850億円から、4年後には9540億円に成長すると予想しており、その中で競合他社との争いを勝ち抜くため、日本法人の強化はAppliftにとって急務だった。

   アドネットワークの情報開示サービスや、RTB(Real Time Bidding)配信などのプログラマティック広告への対応、アドフラウド(ネット広告に起きている詐欺まがいの不正行為)による、無効なコンバージョンを請求から除外する対策など、さまざまな広告手法を相田さんは営業面から技術のことまで横断的に、これまでの経験と実績に基づき本社に提案。それが、評価された。

   相田さんにとっては「社長」というポジションも、「外資」という勤務先も初めての挑戦。「個人的には『ゼロ』からの立ち上げだと思って、どんどん上に昇っていくぞという決意」と語る。

アドテク市場の「透明化」に挑む

「アドフラウドを放っておけば、アドネットワーク自体の信頼性がなくなる」と、危機感を募らせる相田社長
「アドフラウドを放っておけば、アドネットワーク自体の信頼性がなくなる」と、危機感を募らせる相田社長

   相田さん率いる新生Applift Japanが重視しているのは「透明性」だ。「ネットワーク広告では(広告主に)パフォーマンス(広告効果)をお返しすることが大切。ただ、効果ばかりに目がいってしまうため、効果の中身は見えにくい。Appliftでは、それをできる限り排除して、どういうところに広告が掲載されたかなどを開示して、透明性に重きを置いた形で運用させていただく」(相田社長)。「広告の配信媒体の全開示」へのチャレンジである。

   アドテク業界で、この全面開示が「極めてまれ」なのは、媒体の中に広告効果が非常に高い配信先があることがわかれば、広告主がその配信先(媒体)と直接取引する可能性が出てくる。そうなると、アドテク企業が広告費を「中抜き」されることになり、自らの首を絞めかねないという事情がある。

   それにもかかわらず、Appliftがあえて「透明化」に挑むのは成約件数や効果を不正に水増しする不正行為が絶えないからだ。米国では、アドフラウド(ネット広告上の不正行為)による損失額が年間8000億円規模にのぼる。日本でも大きな問題になっており、手口は年々巧妙化しており、対策が求められてきたという。

「アドフラウドを放っておけば、アドネットワーク自体の信頼性がなくなり、アドテク業界の存続すら危ぶまれると、Appliftでは危機感を抱いています。業界全体でブラックボックス化している現状を、私たちが旗振り役となって透明性を保つことの大切さを示したい。それがアドテク業界の進歩にもつながるはずです」

   そう、相田さんは指摘する。

   そのための大きな武器が「Advertiser Portal(アドバタイザーポータル)」。どのアプリに広告が配信されたか、を広告主に表示する管理画面で、日本の広告主に向けて新サービスとして導入、展開していく。

勝負はRTB配信によるアプリインストール広告「日本で浸透させたい!」

   広告掲載先を明確化して「透明性」を強化するだけでは解決しない課題もある。アドネットワークでは、広告主にとって、自社のブランディングとしてマイナスになる可能性があるサイトやターゲットとはまったく関係がないサイトに広告が掲載されることがある。

   こうしたことが数多く発生すれば、せっかく投じた広告費用が計画どおりに使われていないことになる。

   広告主からは、モバイル広告の効果の向上やアドテクの進化の中で、自社の広告予算がどう使われているのかを明確にしたいとの要望が強まっている。こうした広告効果の透明性を担保するのが、RTB配信などのプログラマティック広告。 データに基づきリアルタイムで広告主が望む広告枠を自動買い付ける仕組みで運用型広告とも呼ばれる。

   Appliftでは、アドネットワークとRTB配信の2段構えによる広告配信の体制を構築。狙いや予算などに応じてアドネットワークのサービスと相互に乗り換えを提案していくという。

   世界の潮流はRTB配信に向いているそうで、相田さんは「RTB配信を日本のマーケットで、より浸透させていきたいと思っている」と話す。

   さらに、近年のモバイル広告をめぐる動きで、広告主に人気なのがアプリインストール広告。Appliftの「主戦場」でもあり、相田さん自身もこの分野で強みを持つ。

   アプリインストール広告のネットワークに特化した配信面で、RTB配信での買い付けできるトレーディングデスクは日本では少ない存在。Appliftは、欧米はじめグローバル市場で培った実績があり、そのことを背景に、「日本でのリーダー的存在になることを目標にしています」と、相田さんは力を入れる。




プロフィール
相田 傑(あいだ・すぐる)
Applift Japan K.K.社長

Webを中心としたマーケティング領域で活躍。デジタルマーケティング、プロモーションプランナーを15年勤める。楽天でEC事業者向けの広告商品の企画・開発、販促キャンペーンの立案など顧客向けのメディアプランニングやプロダクトマネージャーを経験。その後、クライアント側でGMOペパボ 社長室でマーケティング責任者。USEN-NEXT HOLDNGSでは、グループを横断するマーケティング部門の立ち上げメンバーとしてマスプロモーションなどを手がけたのちに、株式会社USENのWebマーケティングの責任者に従事した。
2020年4月1日に現職。

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