夏休みを間近に控えた2020年6月15日、ドイツではEU(欧州連合)加盟国とシェンゲン協定(欧州26か国の領域を国境検査なしで越えることを許可する協定)の加盟国、および英国に対する渡航警告が解除されました。一部とはいえ、正式に観光目的の海外旅行が解禁されたかたちです。
とはいえ、ドイツ国内ではマスク着用義務に1.5メートルの間隔保持、消毒などの感染防止対策がいまだ課せられています。観光地でも、人数制限をかけたり、バリケードを設置したりとコロナ仕様。夏の休暇シーズンを「1年で最も美しい時間」とたとえるドイツ人は、ウィズコロナの夏休みをどのように過ごすのでしょうか。
分散型夏休みで「密」を回避
まず、大前提としてドイツの夏休みは「分散型」です。お盆休みのような、多くの人が一斉に休暇をとる日はありません。さらに学校の夏休み期間は、州によって異なります。たとえば、首都であるベルリン州の2020年の夏休みは6月25日から8月7日まで。一方、ミュンヘンを擁するバイエルン州では7月27日から9月7日までと、ひと月もの開きがあるのです。加えて、子どもは授業を受ける義務が法律上あるため、夏休みを過ぎてから家族旅行に行くことは認められません。必然的に、親はこどもの夏休みにあわせて休暇をとることになります。
実際、どのように休暇をとっているのか、ドイツ大手製薬会社で働く日本人女性のAさん(30代)に話を聞いてみました。
Aさん「休暇をとるときは、同僚と重ならないように調整したり、仕事をカバーしてもらうよう頼んだりして、休みのあいだも仕事がまわるようにしています。緊急要件の代理をする担当を記載すること、締め切りやプロジェクトの山場のときには、長期の休暇をとらないことがマナーです。また、子どもの学校や幼稚園、学童の休みに合わせなくてはいけない人を、優先するよう調整しています。夏ではなく、他の時期に休みをとる人もいますよ」
このように、夏休みといっても休暇をとる時期はバラバラなのが当たり前。Aさんの話を聞くかぎり、休める環境づくりが整備され、業務に支障はなさそうです。
分散型夏休みは、企業や役所に勤める保護者が休暇をとりやすくなるだけでなく、過度な渋滞が避けられ、旅行の需要を分散させることができます。ドイツの夏休みのスタイルは、図らずしも「密」になるリスクを減らすことにもつながっているのです。