グローバル化が進み、ビジネスの現場ではますます英語が必要とされている。就職後間もない若者ばかりか、中堅となったビジネパーソンの中にも英会話学校やTOEIC受験のための学校に通う人は少なくない。
書店の語学コーナーにも「やり直し」のための英語の本が数多く並ぶ。本書「英語のなぜ?がわかる図鑑」は、「やり直し」をうたってはいないが、英語を「やり直し」で学ぶ人には最適の一冊。学校の学習で分からないままスルーしていた疑問の解答集といえる内容で、やり直しの学習の道ならしをしてくれる。
「英語のなぜ?がわかる図鑑」(伏木賢一著)青春出版社
80項目の「素朴な疑問」に解答
英語に関する80項目の「素朴な疑問」を、図解でわかりやすく解説。中学や高校での英語の授業で、多くの人が「なぜ?」と思ったに違いない疑問に丁寧に答えている。歴史的背景や、日本との文化の違いに言及した説明で、英語感覚が身につけられそうだ。
著者の伏木賢一さんは、キャリア20年の翻訳家。幼いころからアメリカ人と交流する機会があり、そのことをきっかけに英語に興味を持ち、大学英文科、翻訳専門学校と進み、翻訳を手がけるようになった。カバーする分野は、工業系から医療系、芸術系、またスポーツ系と多岐にわたる。
伏木さんが英語を学び始めて最初に「なぜ?」と思ったのは不定冠詞「a」について。「This is a pen」の「pen」が「apple」になると、なぜ「a」が「an」になるのかという疑問だった。
「a apple」だと発音しにくい―― という説明を受けたが、それなら「ai」でも「au」でもいいのではないか。なぜ「an」なのか。その後、英語を勉強して、やがて「もともと不定冠詞はanだった」ことを知る。どの単語にも不定冠詞が付くときは「an」だったのだ。子音で始まる単語にはいつのまにか「n」が落ちたのが真相。発音しにくいから「n」がつくようになったのではなかった。このことを知って、もっと知りたいと思うようになり、本書はその特集。英語を使うビジネスパーソンにとっても役立つ、英語の「なぜ?」を集めたという。
フランクな表現が好まれる
ビジネス英語で多くの人が戸惑うのは「敬語」だ。学校では「英語には敬語がない」などという説明がある一方で、依頼で使う助動詞を過去形にすると丁寧な言い方になるなどのルールがある。そして、それらを習うのが、日本語でも尊敬語や丁寧語、謙譲語の区別がよく分からないうちなので、いまだに戸惑ってしまう人が少なくないという。
それらのことについて、本書では「英語には本当に敬語がないの?」や「人に何かを依頼するとき、Can you~?をCould you~?と過去形にすると丁寧な言い方になるのはなぜ?」などで解答。「英語の敬語」についてはこう述べられている。「尊敬語や謙譲語に相当する表現はありません」。英語では、社会的地位や年齢による上下関係の意識が希薄で、日常生活ではフランクな表現が好まれるもの。「ただし、TPOに応じた丁寧な表現はある」という。
尊敬語、謙譲語がない分、丁寧な表現では、丁寧の度合いが異なって何種類もあり、「お願い」をする場合でも「Could you~?」のばかりではなく「I was wondering if~」もしばしば使われる。
「なぜ?」の80項目は、6章に分けられている。Chapter1は「英語、そもそもなぜ?」で、敬語はここに掲載。Chapter2は「英単語のなぜ?」で、childの複数形がなぜchildrenなのかなどを解説。Chapter3は「その表記のなぜ?」、そしてChapter4「その違いは何?」ではmeetとseeの使い分けなどに触れる。Chapter5は「英語ならではのなぜ?」と冠詞や時制を扱い、Chapter6「英文法のなぜ?」では、その区別や関係が日本人に分かりにくいsomeとanyについてや、am notの短縮形がない理由など、トリビア的な説明がたくさんあり興味深い。
著者の伏木さんによると、英語について感じる「なぜ?」には、必ず答えがあるもの。それらを一つずつわかっていくと英語の世界が広がるという。やり直し英語の副読本に最適な一冊。
「英語のなぜ?がわかる図鑑」
伏木賢一著
青春出版社
税別1100円