デジタル化やIT化、さらにはグローバル化に、ここ数年の働き方改革の波が押し寄せ、絶え間なく変化が続くビジネスの現場。現代人は多重的に変革する時代を過ごしている。加えて、今度は新型コロナウイルスの感染拡大が風雲急を告げているところだ。
本書「新しい時代を切り開く『リーダー力』の鍛え方」は、気鋭のコンサルタントが、時代の変化にもかかわらず「リーダー」たちの多くが、思考停止状態で、なお「精神論」を説く時代錯誤的な実情を指摘。それを切り捨て、変わりつつある時代にふさわしい新しいリーダーシップやマネジメントに目を向けるよう呼びかけた。自身の成長を模索するリーダーや、次世代リーダーの目指すビジネスパーソン必読といえる一冊。
「新しい時代を切り開く『リーダー力』の鍛え方」(大野祥江著)小学館
「平等」「機会均等」は表面上のこと
著者の大野祥江さんは、コンサルティング会社の代表取締役を務める人事コンサルタント。企業の管理職を対象にした「評価者研修」をはじめ「キャリアビジョン研修」「採用面接官研修」などの教育プログラムを開発。上場企業を中心に5000人以上の管理者の研修に携わってきた。
人材の採用・育成は、多くの企業では人事部や総務部といった部門が担当。著者の仕事は、これらのセクションの「人」に関する役割をサポートすることだ。人事や総務など人材関連の部門では、たいてい人材育成のための制度をさまざまに考案。その活用を図っているが、著者は「結局のところ、組織の『人』に関する事柄は現場で人材をマネジメントしているリーダーと言われる管理者層の力量に大きく左右されるのではないかと考えています」という。
本書で著者が問題にしていることの一つは、その「現場で人材をマネジメントしている管理者層」だ。というのも、仕事上のさまざまな機会を通じて接する、その層に属する人たちの場合、「非常に多い」割合で「努力と気合と根性」といった精神論を好み、管理者向けの評価者研修ではよく「結局、最後は部下に対する好き嫌いですよね?」などと確認する人がいるため。
こうした確認を求める人物に「どのような部下が好きですか?」と聞くと「やっぱり頑張ってる奴がいい」と、にっこり笑顔で答えるのだ。
著者の目からは、日本社会全体を眺めてみても、この20年間、閉塞感を打開できない状況が続いているように感じるという。表面上は「平等」や「機会均等」という言葉にくるまれてはいるが、管理者らの発言や態度をみると「内部を動かしているのは気合と根性、というチグハグな状況」と指摘する。