コロナ後のネットビジネスの行方 成功をもたらすカギをつかむには

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   大手コンサルティング会社でキャリアをスタート。その後、NTTドコモのiモード事業や、楽天のネット新規事業のほか、さまざまなオンラインビジネスに携わってきた尾原和啓さん。近年は数々の著書で打ち出す的確な指摘で、IT批評の第一人者としても知られる。

   2020年6月に刊行された新著「ネットビジネス進化論 何が『成功』をもたらすのか」は、これまで四半世紀にわたるネットビジネスの進化の要点を整理して「勝者を生む原理」を導き、それをもとに未来を見通した。AIや5Gなどで新たな局面に入ったネット時代の教養書であり、これからのビジネスにおける着想を得るための参考書にもなる一冊。

「ネットビジネス進化論 何が『成功』をもたらすのか」(尾原和啓著)NHK出版
  • ネットビジネスの原理・原則には多くの共通点あり
    ネットビジネスの原理・原則には多くの共通点あり
  • ネットビジネスの原理・原則には多くの共通点あり

GAFAMが社会のインフラとなって

   2020年に入ってから、しばらくしてから世界は新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われ、その影響はいまだに続いている。世界各国がロックダウンで外出自粛が続き世界経済が揺さぶられた5月。そうした中でGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)にマイクロソフトを加えたGAFAM5社の時価総額は約560兆円となり、東証1部2170社の時価総額の合計を上回ったと報じられた。

   「各国でロックダウンや外出自粛が続く中で、リアルベースの日本企業が企業価値を下げる一方、ネットを中心としたGAFAMはむしろ価値を伸ばしたのです」と著者は強調。社会のデジタル化が進むなか、わたしたちの生活のかなりの部分がネットに支えられる構造となり、GAFAMにより、それはもはやインフラといえる存在に高まった。そこへコロナが現れ、ビジネスや生活様式がさらにデジタルに依存を強める。GAFAMの価値が伸びたのは、ネットのインフラ化が確定したことを示しているのだ。

   コロナの到来で社会は「オンラインを中心としたネットビジネスへの進化を余儀なくされている」と著者。コロナ到来前には、そうした進化の時期は10年単位の時間をかけて起きると考えていたという「すべて活動がオンラインになる『アフターデジタル』の世界」だが、コロナによって一気に実現に向けて動き出した」という。GAFAMの価値拡大は、その動きに呼応したものでもある。

ネットがリアルを上書きしていく

   コロナの到来で、図らずも直面することになったライフラインとしてのネットビジネスを考えると、コロナ以前の安定成長の時代とは異なるアプローチが必要だ。

   ウィズ・コロナの時代では、起きる可能性が高い想定外のリスクの回避のため、近い者同士では生じやすい共倒れを防ぐため、環境が違う者同士なら行いやすい助け合いのため、遠くのものをつなげるインターネットの力を上手に取り込むことが求められるという。

   さらに、そのことを理解するだけでは十分とはいえない。アフターデジタルの時代は「5G、AI、キャッシュレス決済など、これからネットがリアルを上書きしていく」流れ。加速するネットビジネスの進化の行き先が分からなければ、ただネットの荒波に翻弄されるがままになってしまう。新型コロナをめぐる見通しがはっきりせず、その一方で、コロナの影響でネットやデジタル依存は高まっている。

   トレンドはどうなっているのか――。関連のビジネスに携わる人の中にも不安を抱えている人が多いのではないかと著者はみており、任せなさいとばかりにこう述べる。

「ネットビジネスの原理・原則まで深堀りしていけば、そこに多くの共通点があることがわかります。それがわかると、この先、ネットビジネスがどこに向かうのか、グローバル企業が目指す一等地に先回りすることも不可能ではありません」

   本書では、ヤフーとグーグルの「検索エンジン」の覇権争いから、ヤフーがスーパーアプリへと転換を図り、成功した棲み分けなどからオンライン決済、予約システム、コンテンツの課金ビジネス、SNSのほか、近年活用の場が広がっているブロックチェーンやシェアリングエコノミーについて深堀りして詳しく解説。著者によると、これらのネットビジネスは、生物の進化のように一つの種から枝分かれして、現在の多様な世界をつくりだしている。その「系統樹」に応じて本書を構成。ちょっと見ただけでは複雑で理解が容易ではなさそうだが、読み進めるとうまく整理されているのでスムーズに咀嚼でき、それぞれがどういう原理で成り立っているのかがよくわかる。

「ネットビジネス進化論 何が『成功』をもたらすのか」
尾原和啓著
NHK出版
税別2200円

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