ネットがリアルを上書きしていく
コロナの到来で、図らずも直面することになったライフラインとしてのネットビジネスを考えると、コロナ以前の安定成長の時代とは異なるアプローチが必要だ。
ウィズ・コロナの時代では、起きる可能性が高い想定外のリスクの回避のため、近い者同士では生じやすい共倒れを防ぐため、環境が違う者同士なら行いやすい助け合いのため、遠くのものをつなげるインターネットの力を上手に取り込むことが求められるという。
さらに、そのことを理解するだけでは十分とはいえない。アフターデジタルの時代は「5G、AI、キャッシュレス決済など、これからネットがリアルを上書きしていく」流れ。加速するネットビジネスの進化の行き先が分からなければ、ただネットの荒波に翻弄されるがままになってしまう。新型コロナをめぐる見通しがはっきりせず、その一方で、コロナの影響でネットやデジタル依存は高まっている。
トレンドはどうなっているのか――。関連のビジネスに携わる人の中にも不安を抱えている人が多いのではないかと著者はみており、任せなさいとばかりにこう述べる。
「ネットビジネスの原理・原則まで深堀りしていけば、そこに多くの共通点があることがわかります。それがわかると、この先、ネットビジネスがどこに向かうのか、グローバル企業が目指す一等地に先回りすることも不可能ではありません」
本書では、ヤフーとグーグルの「検索エンジン」の覇権争いから、ヤフーがスーパーアプリへと転換を図り、成功した棲み分けなどからオンライン決済、予約システム、コンテンツの課金ビジネス、SNSのほか、近年活用の場が広がっているブロックチェーンやシェアリングエコノミーについて深堀りして詳しく解説。著者によると、これらのネットビジネスは、生物の進化のように一つの種から枝分かれして、現在の多様な世界をつくりだしている。その「系統樹」に応じて本書を構成。ちょっと見ただけでは複雑で理解が容易ではなさそうだが、読み進めるとうまく整理されているのでスムーズに咀嚼でき、それぞれがどういう原理で成り立っているのかがよくわかる。
「ネットビジネス進化論 何が『成功』をもたらすのか」
尾原和啓著
NHK出版
税別2200円