問題は「ふるさと納税」がなければ地方自治が成り立たないこと
訴訟の争点は、2019 年6月の改正地方税法による対象地方自治体の指定制度導入時点で、泉佐野市の返礼品の状況を理由に指定除外としたことが法的に妥当かという点だった。
国は「過去の実績を判断材料とすることには、一定の合理性がある」と主張。これに対して最高裁は、「新制度の施行前は返礼品の提供で特に法令上の規制は存在しなかった。新制度は一定の対象期間の寄付金募集実績に関するもので、施行前の過去の実績をもって不適格とすることを予定していると解するのは困難」とし、除外処分は無効と判断した。
ただし、最高裁は泉佐野市が返礼品にアマゾンギフト券を上乗せするなどの行為に対しては、「寄付金集めをエスカレートさせ、社会通念上の節度を欠いた」と指摘し、その行為に対して「クギを刺した」。
この最高裁判決を受け、総務省は7月3日にふるさと納税から除外した4市町のうち泉佐野市、和歌山県高野町、佐賀県みやき町の3市町の制度復帰を認めた。ただ、残る静岡県小山町は地場産品でない返礼品を扱ったことも除外理由となっていたため、別途検討されていたが、17日には制度復帰が認められた。
一方で総務省は同日、7月23日に高知県奈半利町について、ふるさと納税制度の指定を取り消すと発表した。理由は、奈半利町が返礼品の基準である「地場産品」「寄付額の3割以下」について虚偽の申告を行い、指定を受けていたため。これにより奈半利町は2年間、ふるさと納税制度に復帰できなくなる。
さて、今回の逆転勝訴は泉佐野市をふるさと納税制度から除外したことが適法だったか否かを判断した内容だった。泉佐野市は2017年度に135億円、18 年度497億円をふるさと納税制度で集め、全国トップとなった。
これに対して国は、特別交付税を懲罰的に減額しており、泉佐野市は減額取り消しを求めた訴訟も起こしている。こちらの訴訟については、今後も引き続き司法の場で争われることになる。
しかし、何よりも問題なのは、泉佐野市が逆転勝訴しようが「返礼品は寄付額の3割以下とし、地場産品に限る」とし、ふるさと納税の対象地方自治体を総務省が指定する仕組みに変更はなく、地方自治体間では決められた基準の中で「ふるさと納税を奪い合う競争」が続くことだ。
つまり、本質的な問題はふるさと納税がなければ、地方自治が成り立たなくなっていることにあり、地方税に対する根本的な見直しなどを行う必要があるのだ。(鷲尾香一)