日韓経済戦争が勃発して1年余。さしもの日本製品の不買運動も終わりに差し掛かっているようだ。なかには、不買運動以前より売り上げを増やしている商品もあるという。
ところが、安心は禁物。またまた日韓対立を激化させる爆弾の導火線に火が付きそうだという。今度はなんの関係か、「ソウル市長のセクハラ事件」とか。韓国紙で読み解くと――。
ゴルフ用品、ボールペン、化粧品は逆に売り上げ伸ばす
日本製品の不買運動が沈静化しつつあると報じるのは、聯合ニュース(2020年7月15日付)「日本製品の不買運動鎮静化? 輸入減少率が改善」という見出しの記事だ。
「日本製品の不買運動による日本製品の輸入減少傾向が、今年上半期には他地域と同水準まで改善したことが、7月15日分かった。韓国関税庁がこの日発表した6月の輸出入現況(確報値)によると、今年1~6月の日本からの輸入額は220億ドル(約2兆3600億円)で前年同期間比9.9%減少し、輸入全体の減少率(9.0%減)と同水準だった」
つまり、今年1~6月期、新型コロナ禍によって各国からの消費財の輸入額が減少しているが、日本からの輸入額の減少も他の国々とほぼ同じ水準のマイナス9%台になり、不買運動の影響がほとんどみられなくなったというわけだ。
「ノーノージャパン」「ボイコットジャパン」と呼ばれた不買運動が始まったのは、昨年(2019年)7月1日の日本の輸出規制以降だ。その後どんどん広がり、新型コロナウイルスの影響が表れる直前の今年1月、ピークに達した。日本からの輸入額は前年同月比マイナス21.8に%急減した。しかし、減少率は2月にはマイナス1.0%に改善、3月にはプラス1.9%に転じた。
いったい、何が回復したのだろうか。不買運動の影響を、もろに受けたのは自動車、ビール、タバコ、酒、化粧品、ボールペン、ゴルフ用品、醤油、アパレルなどだが、ゴルフ用品、ボールペン、化粧品、醤油などは不買運動前の状態に戻っている。
たとえば、ゴルフ用品やボールペン、化粧品は不買運動が始まる前の昨年6月より増えている。ビールと日本酒も徐々にではあるが増加傾向にある。
トヨタは半減、ホンダは9割減の惨状
日本製品の中で依然として不振なのが日本車だ。いちばん被害が少なかったトヨタの惨状を、聯合ニュース(7月13日)「韓国トヨタ 不買運動で営業利益が半分に」が、こう伝える。
「韓国でのトヨタ自動車の売上高が減少した。日本製品の不買運動が広がったことが影響した。韓国トヨタ自動車が7月13日に公表した監査報告書によると、2020年3月期通期(2019年4月~2020年3月)の売上高は約710億円(7980億ウォン)で前期比33.4%減少した。営業利益は29億5000万円で同51.4%減だった。純利益は45億4000円から19億6000万円に減った。ただ、トヨタはホンダや日産自動車に比べ、善戦している。ホンダコリアは営業利益が前年比90%減少し、日産は韓国市場からの撤退を決めた」
とはいえ、この日本製品の回復傾向も「風前の灯」だ。文在寅(ムン・ジェイン)大統領の支持率が急激に下がっており、支持率アップのためにお得意の「反日カード」を切る可能性が高まっている。8月4日に迫っている徴用工裁判の被告企業の差し押さえ資産の現金化だ。もし、現金化に踏み切ったら、安倍政権の報復は必至で、日韓経済戦争が再燃する。
聯合ニュース(7月16日)「文大統領の支持率44.1% 9か月ぶり低水準」が、その危険性をこう伝える。
「韓国の世論調査会社、リアルメーターが7月16日に発表した文在寅大統領の支持率は前週より4.6ポイント下落の44.1%で、昨年10月(41.4%)以来、9か月ぶりの低水準となった。当時は文大統領の側近で法務部長官だったチョ・グク氏の家族らの不正疑惑が大きな注目を集め、批判を浴びていた時期だ」
支持率の大幅な下落の最大の理由は、韓国メディアを連日賑わせている故朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長のセクハラ事件だ。約4年にわたって女性秘書にセクハラを続けていたことが発覚、自殺したが、女性秘書が警察に出した告訴の内容が、警察から大統領府を通じて故パク市長に流れていた事実も明らかになっている。
しかも、故パク市長は与党・共に民主党所属で、文大統領同様に人権派弁護士出身、後継ナンバーワンと目されていた人物だ。韓国中の世論が激怒している。「チョ・グク疑惑」の時も文大統領は世論の怒りをそらすためにGSOMIA(ジーソミア・軍事情報包括保護協定)の破棄という「反日カード」を切ってきた。今回もその手を使うのだろうか。
(福田和郎)