2020年7月22日から政府が始めようとしている観光支援策「Go Toトラベル」キャンペーンに地方や医療界から猛反発が起こっている。
東京などの首都圏や、大阪などの近畿圏で続く新型コロナウイルスの感染を、旅行者が地方に拡散せることを恐れる知事らが多いのだ。
ツイッターでは「♯Go Toキャンペーンを中止してください」というハッシュタグが登場して、トレンド入りした。これほど猛反発が起こっているのに、なぜ政府は強行しようとするのか。主要紙の論調から読み解くと――。
医療専門家「まったく理解できない。今やるべきは移動制限だ」
そもそも、どんな思惑から安倍政権は、前倒しを急いだのか――。東京新聞(7月15日付)「あべこべ政策譲らず 専門家『今やるべきは移動制限』 予算1.7兆円は医療現場や被災地に」は、政府が前のめりの理由をこう説明する。
「政治アナリストの伊藤惇夫氏は4月初めに関連予算案が閣議決定された点に触れて『当時は危機的な状況の真っ最中。それなのに政府はコロナ後の話を持ち出してきた。あの時も非難を浴びたが引っ込めず、今も態度を変えようとしない。このキャンペーンは経済産業省が主導している。彼らは現政権で幅を利かせているため、他から歯止めが働かなくなっている』という。
また、政治ジャーナリストの角谷浩一氏は『現政権は異論に耳を貸さず、決めたことは粛々とやればいいと考えてきた。そのため、臨機応変の対応は苦手。キャンペーンに対しても、プランBのような代替の経済対策を用意していないから、固執せざるをえない』と語る」
医療の専門家たちは「呆れるばかりだ」と、東京新聞が続ける。
「国際医療福祉大学の高橋和郎教授は『事態が悪化していることは明らか。市中感染が広がり、無症状の感染者が増えている。本来なら検査を通じて感染者を割り出し、隔離しなければならない。政府は真逆のキャンペーンをやろうとしている』と嘆く。長崎大学感染症共同拠点の安田二朗教授も『誰が考えてもおかしい。全く理解できない。今やるべきは移動制限だ』と切り捨てる」
こうした政府の対応にネット上では怒りの声があふれている。ヤフーニュース「みんなの意見」のアンケート調査で「Go Toキャンペーンに批判、どう思う?」と聞くと、7月15日17時現在(投票数17万5704票)で、「延期すべき」が93%、「7月22日からの実施で問題ない」が6%と、圧倒的に多くが「延期しろ」という声だ。
被災地の人がどんな思いか、政治家は考えることが出来ないのか
「妊婦です。感染者がまた増えたため家族の立ち会いもできなくなりました。ただでさえ不安な出産です。なのに、1人で出産しないといけない。政府はもう感染者を減らしていくつもりはないのですかね? 外出は極力控えていますが、自分だけ気をつけるには限度があります。これから絶対増える感染者。怖いです」
「今回の豪雨被災地は1人でも多くの方の手が必要ですが、コロナ対策で県内限定、市内限定でのボランティア受付しかしていません。一方、国は税金を使って旅行に行けと囃立てる...。悲しくなります」
「Go To キャンペーンの前倒しを、熊本の人たちや、必死にボランティア活動に取り組んでいる高校生たちがどんな思いでいるのか、政治家は考えることができないのでしょうか?」
「うちの会社の社長も、Go Toで4連休に東京から離島へ行くようです。会社のトップたるもの、従業員より一番コロナ禍を気にしないといけない立場。奥さんが行くと言ったらしいですが、それを断れないトップは最低です。自分だけ罹るのであればいいですが、従業員含め周りに迷惑をかけるのをわかっていただきたい。この国は民間会社も政府もトップはおかしいです」
「全国の知事さんに言いたい。全員でGo Toに反対してほしい。感染が拡大しても国は一切責任を取るつもりはありませんよ。政府としては自治体のせいにすればいいわけだしね。現在のコロナ問題を『東京の問題』と言い放ったように」
「Go To キャンペーンに批判的な都道府県は、今回の宮下宗一郎・青森県むつ市長の発言や、沖縄県の玉城デニー知事が以前に言ったように『私たちの県には来ないで』と発信したらよいと思う。その効果は絶大だ。だって、旅行を楽しみたい人は歓迎されない所へ行きたくないから。Go To は実質的に縮小することになる。また、Go To を歓迎している県で試験的に行われて、その結果をみて他の都道府県が参加の判断材料にすればよい」
「休業保証のお金はないが、旅行補助のお金は出せる。どういうことですかね? コロナが日本全体に蔓延する第2波は確実に人災によって引き起こされる。そして、観光業者もGo Toキャンペーンでスズメの涙ほどの一時的な利益をえて、その後壊滅的な経営難になる。本当に年度初めにがんばった努力が水の泡となる世界が見える。国よりも地方自治体の長はやめてくれといっている分、もう地方分権も視野にいれて行かなければならない時代になりつつあるのかな?」
(福田和郎)