藤井聡太棋聖も足を運んだ! 囲碁・将棋の愛好家が「もっと強くなるため」に訪れる専門店(Vol.13「アカシア書店」)

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   靖国通り裏手の路地にあるアカシヤ書店には、全国から囲碁や将棋の愛好家が掘り出し物を求めてやってくる。

   そう! アカシヤ書店は囲碁・将棋の専門店だ。

取材中も常連のお客さんが訪れ、星野さんと親しげに談笑していた
取材中も常連のお客さんが訪れ、星野さんと親しげに談笑していた

   1972年に中野に開業し、神保町店に店を構えたのは2000年。主な商品は囲碁や将棋の戦術に関する本や歴史を扱う書物、棋士のエッセイなどだ。江戸時代に刊行された貴重本などの品揃えも充実している。易学やスピリチュアル関係の本なども取り揃えている、店主の星野穰さんは「勝負とは最終的には心の戦い。そういった意味で、うちで扱う本はすべて囲碁・将棋に通ずるものと思っています」と話す。

   本棚から溢れるように、本は絶妙なバランスを保って高く積み上げられており、壁にはプロ棋士のサインが飾られている。

奥深い将棋の世界との出会い

   店主の星野さんの実家は古本屋だった。「アカシヤ書店」の屋号は、それを受け継いだ。幼い頃から父について古書の買い付け市場に足を運んだ。大人ばかりの市場で、待ち時間の楽しみが将棋だったという。

   幼い頃から慣れ親しんだ将棋の世界、いざ独立して自身の店を始めようと考えたとき、将棋の本の専門店にしようと思い至ったのは自然なことだった。

「将棋から派生して、囲碁関係の本も取り扱うようになりました。今では比率としては半分半分」

   星野さんは将棋ペンクラブに所属し、事務局を務める。会報の発刊やイベント、将棋界での活動も、古書店店主とは別の、もうひとつの顔である。

コレクター垂涎の的! 江戸時代の戦術本も揃える

   アカシヤ書店は、専門店ならではの豊富な品揃えが魅力だ。古いものでは江戸時代の書籍まで取り揃えている。レジ横の棚から取り出して見せてくれたのは、江戸時代の戦術本。コレクター向けの稀少な高額商品である。

「貴重本との出会いは、大きな喜びです」

と、星野さんは語る。

元和2年に刊行された「象戯馬法并作物」(著:初代大橋 宗桂)
元和2年に刊行された「象戯馬法并作物」(著:初代大橋 宗桂)

   一般的な実用書に関しては、悩みもあるらしい。

「碁の戦法は昔のものもよく読まれているが、将棋の戦法は次々に新しいものが生まれて、本の情報だけでは難しくなっています」

   しかし、囲碁や将棋の世界を長く見つめている星野さんは、

「まぁ時間が経てばまた、そういった本が出てくるから」

と、どっしり構えている。

お客さんの共通点は「囲碁・将棋を楽しんでいる」こと

   アカシヤ書店で人気の一冊は、藤井聡太棋聖が愛読していることでも知られる「詰将棋パラダイス」という月刊誌だ。本誌を目当てに来られるお客さんも多いそうだ。

「将棋が強くなりたいと思っているお客さんが、うちに本を探しに来るんだと思います」

と、星野さん。

「月刊 詰将棋パラダイス」
「月刊 詰将棋パラダイス」

   今をときめく藤井聡太棋聖も、プロ入りする前に「おばあさんと一緒にお見えになりました。来店されたのは、その一回ですが、それ以前から通販で詰将棋の本を数度お買い上げいただいたことがあります」とのこと。

   古くからの常連さん、地方から足を運ぶ人やプロ棋士、海外からの来日客など、アカシヤ書店を訪れる人はさまざまだ。多くの囲碁・将棋を愛する人たちにとって、アカシヤ書店は「わざわざ」足を運びたい、とっておきの店なのだろう。

   「強くなりたい」「もっと知りたい」、お客さんのそんな気持ちに応えることが、星野さんの原動力になっているのだろう。勝負を楽しみ、技術の向上を目指す人々が、きょうも絶えずアカシヤ書店を訪れる。(なかざわとも)

   

【追記】2020年7月16日、藤井聡太七段が棋聖戦で渡辺明棋聖(棋王、王将、36)を破り、17歳11か月の史上最年少で初タイトルを獲得する偉業を達成しました。これに合わせて、見出し、本文を七段から「棋聖」に修正いたしました。
藤井棋聖、おめでとうございます。

なかざわ とも
なかざわ とも
イラストレーター
2016年3月学習院大学文学部卒。セツモードセミナーを経て桑沢デザイン研究所に入学、18年3月卒業。趣味は、宝塚歌劇団、落語、深夜ラジオ、旅行。学生時代より神保町に惹かれ、現在フリーペーパー「おさんぽ神保町」の表紙や本文のイラストを手掛けている。1994年、東京都生まれ。
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