連日報道される「クルーズ船」でコロナの怖さが一気に広まった
――しかし、日本の場合、安倍政権が習近平国家主席の国賓来日に遠慮して入国規制が遅れ、春節期間中(1月24日~30日)に大量の中国人観光客の入国を許してしまいました。また、2月には横浜でクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の集団感染を引き起こした際の対応も批判されました。その日本が9位にランクインしたことには違和感があるのですが、理由は何でしょうか。
高山さん「先に述べたように厚生労働省の初期対応は早かったのです。1月7日に空港で、武漢からの帰国者で発熱や咳がある者は検疫官に申告するよう呼びかけています。また、中国に渡航する者にも注意を呼びかけています。しかし、それ以上に国民への注意喚起という意味で効果が大きかったのは、あなたが指摘したクルーズ船の騒ぎでしょう。
連日、新型コロナウイルスがテレビや新聞で大きく報道され、情報がたくさん出てきて、国民に行き渡るのが非常に早かった。国民のコロナに対する危機感を高めて、その後、緊急事態宣言が出されても自粛要請に素直に従う人が多かった。その点、震源地から地理的に遠かった欧米人が少なからず油断をしていた面もあると思います」
――今後の見通しはどうなるのでしょうか。
高山さん「今回の評価はまだ途中段階です。今後、第2波、第3波が来た場合はその対応の巧拙で評価が変わってきます。ただ言えるのは、よく『経済再開を優先させるか』『感染拡大を防止して命をとるか』と論議されますが、今回の調査でわかったのは、どちらの対策が優れているかは一概に言えないということです。
たとえば、ヨーロッパ諸国の中では、個人の人権を尊重するスウェーデンでは経済活動を強く制限する措置は実施しませんでしたが、経済への被害を避けられた訳ではありません。逆にポルトガルは早期のロックダウンを実施し人命を重視したけれど、それでも一定の犠牲者は出てしまいました。ヨーロッパは各国がさまざまな対応を取りましたが、どちらが優れているという事はありませんでした。
東南アジアと比較すると、結果は五十歩百歩でした。感染者数が多くなってしまったヨーロッパでは、行動制限を課していなくても、人々や企業が感染防止的な行動を実施するため、経済への影響が生じてしまいます。また、ロックダウンを実施しても、感染が収束するまでには時間を要し、コロナ被害をすぐに抑えられた訳でもないということです」
――というと、第2波の襲来を考えると、何が一番大切なのですか。
高山さん「つまり、一番大事なことは初動体制でウイルスの侵入を抑えることだったと言えます。侵入されたあとに『経済か』『命か』と議論しても、どちらも一定の被害を被ってしまうということです。
第2波以降でも当然、水際作戦は重要です。ただし、多くの国では国内での感染者が一定数確認されていますから、国外からの感染者を防ぐということだけでなく、国内で発生した感染者を広げないという対策も重要になっています。水際対策だけでは感染拡大を防げなくなっているという意味でも、これまで以上に難しいかじ取りが求められると思います」
(福田和郎)