東京都内で2020年7月10日に確認された新型コロナウイルスの感染者が、過去最多の243人に上り、前日の9日の224人に続き2日連続での200人超えに衝撃が走っている。
9日の224人では、ホストクラブなど「夜の街」関連だけでなく、家族間や職場、友人間の会食などが増加しているのが特徴だ。
それでも政府は7月10日から予定どおり、プロ野球やJリーグ観戦などイベント再開に踏み切る。「第2波」の心配はないのか? 主要メディアが取り上げた専門家の意見は「危険な段階だ」「市中感染が広がっている」と厳しいものばかりだが......。
「検査数が増えた」という小池知事に専門家は「理由にならない」
7月10日付主要紙朝刊の報道を総合すると、今回の事態を受けても政府は「ただちに緊急事態宣言を再び出す状況と考えていない」(菅義偉官房長官)として、7月10日から予定どおり5000人規模のイベント開催を認め、社会経済活動の再開をさらに進める。
東京都の小池百合子知事も、特に活動の自粛を求める考えはなく、7月9日、「過去最大の数字ですが、検査体制を拡充しており、陽性者数だけを見れば、今後も増える可能性があります」と語った。検査件数を増やしたから感染者が増えたというわけだ。小池知事は具体的な数字をあげながら、
「4月17日に過去最多の206人の感染を確認したときの検査数が919件、今回の検査数は3400件にのぼっています。約3.5倍ですよ、3.5倍...。」
と、「3.5倍」という数字を何度も繰り返した。
しかし、足元の都の専門家会議のメンバーたちは、もっと厳しい見方を報道陣に語った。「3.5倍」という数字はあまり意味がないというのだ。
朝日新聞(7月10日付)「医療現場への影響懸念も」によると、坂本哲也・帝京大学病院長は「検査して陽性になる人の割合である陽性率が上がっていることが問題だ」と指摘した。陽性率が上がり続けており、2週間前の2.8%から7月9日には5.8%にまで上がった。陽性率は検査件数が増えれば、理論的には下がるはずだ。それが上がり続けているのはなぜか――。
坂本氏は、
「実際の患者数が増えているためだ。(ホストクラブなど)感染の確率が高いところでの検査が多いだけではなく、接触歴などが不明の患者が増加していることが影響している。(今は若い世代が中心だが)重症化する可能性がある中高年に感染が及び始めている兆しがある」
と、強い危機感を表した。
また、小池都知事は「夜の街関連」を強調するが、接待を伴う飲食店以外でも感染者が広がっていることが大きな懸念材料だと、都の専門家たちは指摘した。7月9日の新規感染者224人のうち、実際の「夜の街関連」は28%の63人で、感染経路不明者は104人と半数近くにのぼった。
読売新聞(7月10日付)「家族・職場でも感染 都、入院・陽性増を警戒」によると、7月8日までの1週間の感染者のうち、家族間や職場内、友人らとの会食で感染した人がそれぞれ50人ほど確認され、従来よりも大幅に増えた。
都の専門家会議のメンバーである今村顕史・都立駒込病院感染症以下部長は、こう警鐘を鳴らした。
「(新宿や池袋など)今まで感染者が集中していた場所の隣接地でも増加が見られる。若い人は症状があまり出ない。知らないうちに年齢が高い人にうつさないかが、今後、一番重要な点になる」