解約自由なのに「解約期間を短く」「電話に出ない」
4つの問題点については、
「表示」
販売業者がお試し価格や解約自由の表示を他の契約条件の表示よりも誇張し、かつ契約条件の全体が理解困難な表示手法がとられている。たとえば、お試し価格などの表示につき、他の契約条件と比して著しく大きなフォントサイズ、目立つフォント、文字色、背景色などを使用するほか、お試し価格の表示から何度もスクロールしなければ認識できないような離れた位置に他の契約条件を表示すること。
「契約内容」
たとえば、中途解約した場合にはお試し価格が通常価格に戻ること、2回目は数か月分の一括購入とすること。
「解約手続」
たとえば、定期購入契約であることを表示する一方で、解約自由を強調しておきながら、実際には解約手続の方法を電話のみに限定し、かつ解約期限を比較的短い期間に設定することによって当該期間が過ぎるまで電話受付を事実上拒否して解約できないようにすること。また、解約期限を他の契約条件と関連させて複雑にしたうえで、他の契約条件を表示しない、またはわかりづらく表示すること。
「消費者による誤認など」
たとえば、表示に係る問題や「お試し」という文言に対する消費者の一般的な理解と定期購入という実際の契約内容との矛盾を前提として、消費者に対して金銭的な負担はない、またはお試し価格のみ支払えばよいと誤認させること。
こうした実態に対して、消費者委員会では「法制度や法執行のあり方を含む消費者被害の未然防止、再発防止、被害回復について検討を行い、必要な措置を講ずるべき」としており、「ガイドラインの見直し」と「執行の強化及び高度化」について、消費者庁に対して早急に対策を講ずべきとしている。
具体的には、
「 ガイドラインの見直し」
インターネット通販における申込みの最終確認画面などを規律する「インターネット通販における『意に反して契約の申込みをさせようとする行為』に係るガイドライン」につき、見直すこと。
「執行の強化及び高度化」
執行官庁の迅速な執行などを通じて悪質な事業者を市場から淘汰するとともに、健全な事業者が適正な事業を行えるよう、執行の強化に向けて、事業者や消費者にとってわかりやすいガイドラインを整備すること。
また、ICT(情報伝達技術)やAI(人工知能)の積極的な活用、健全な事業者団体などとの連携の強化により、監視を高度化する体制を整備すること。
――の3点だ。
コロナ禍にあって、食品類や日用品をはじめ、あらゆるモノを通販で買う傾向が高まっている。通販を利用する人は、まだ増えそう。規則の改正で、「お試し商法」が健全に運用されることで、消費者にとって「お試し」が真に意味のあるものとなり、購入につながるような形に改善されていくことが必要だ。(鷲尾香一)