面接にも、交渉ごとにも応用できる
「What to say」が決まれば「How to say」は見えてくる。たとえば「アルコール度数1度、無農薬栽培の天然果汁100%、レモン味とメロン味の2種類」という商品の広告制作。「アルコール度数1度」を「What to say」にすれば、「あまり、お酒に強くない方に」というキャッチフレーズが候補の一つとなり、「無農薬栽培のレモン使用」なら、「この爽やかな酔い心地は、自然育ちのレモンから」と、なるという。
デザイナーによるビジュアル、タレントのキャスティングも「How to say」の領域だ。それらもコミュニケーションに大きな影響をもたらす。
「What to say」と「How to say」、それぞれのプロセスや相関性など、どんな広告になるかの分岐点はいくつも存在する。広告制作の当事者になった場合には、「What to say」と「How to say」で自分の頭の中と、一緒に広告を考えるチームの人々の頭の中を整理しておかないと混乱が生まれ、なかなか成果にたどりつけないことになる。
藤島さんはこうした広告制作を繰り返して、その積み重ねの中からコミュニケーションのノウハウを導き出した。それを整理してコミュニケーション術として詳しく解説したのが本書だ。
引っ込み思案に悩む人でも、本書を通して、伝えることの本質が分かれば、面接で、交渉で、また、日々の人間関係で、戸惑うことがなく、伝えたいことを伝えられるようになるはずと請け負う。
藤島さんは、本書を執筆中に新型コロナウイルスの感染拡大の顕在化を目の当りにして、「VUCAの時代」と言われる現代を象徴する出来事と感じた。
「VUCA」は、Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)―の頭文字をとったもの。そんな時代には「コミュニケーションがますます大事」と指摘。「変動しない、確実で、シンプルで、明確なコミュニケーションがあれば、この時代を渡っていける。コミュニケーションはVUCAの大海原を航海するための羅針盤となる」という。
「臆病者のコミュニケーション 考える、思いつく、伝える」
藤島淳著
講談社
税別1200円