新型コロナウイルスの感染対策をめぐり、東京都VS政府のバトルが起こっている。
連日100人超えの新規感染者を出している東京都の小池百合子知事が、周囲の県への感染拡大を防ぐため、都民に「不要不急の都外への移動の自粛」を呼びかけたところ、菅義偉官房長官らが「必要ない。これまでどおり自由だ」と一蹴したのだ。
いったい、なぜ対立するのか。ネットの声では「東京都のほうが正論だ」と圧倒的多くが都に軍配を上げているが......。
都民が旅行を控えれば観光キャンペーンが盛り上がらない
2020年7月7日付主要新聞(オンライン版)の報道を総合すると、小池都知事VS菅義偉官房長官・西村康稔経済再生相のバトルは、こうして始まった。
東京都内で再び新型コロナウイルスの感染者が連日100人を超え、ついに131人に達した7月4日、小池都知事は記者会見を開き、「不要不急の他県への移動はご遠慮願いたい」と呼びかけた。さらに都知事選で再選を果たした翌日の7月6日にも依然として100人超えが続いているため、同じ呼びかけを行った。
すると、小池知事の発言に対して当初は、「知事の責任で呼びかけをされるということだろう」と静観していた西村大臣が6日の報道番組で「相当感染が広がっているような印象を地方に与えている」と苦言。菅官房長官も7日の記者会見で「体調の悪い方などには移動は控えてほしいが、(政府としては)一律に移動自粛を要請する必要があるとは考えていない」と述べ、こうした見解を西村氏が小池氏に伝えたことを明らかにしたのだった。
西村大臣は6日夜に小池都知事に電話で、「熱などの症状や違和感がある方はそもそも外出を控え、県をまたぐ移動も控えてもらう。そのことは基本的対処方針や通知で示しており、理解をいただきたい」と伝えたといい、「(小池都知事は)理解はしてもらったと思う」と記者団に述べた。
ところが、小池都知事は少しも「理解」していなかったのだ。小池都知事は7日夜、都庁で記者団にこう説明した。
「4日にその旨(編集部注:都民に不要不急の都外への移動を控えること)を西村氏に申し上げ、6日の『ぶら下がり取材』でも同じことを申し上げた。その時は、そういう反応はされてなかったのでちょっと驚いている。(自粛の呼びかけについては)感染者が多く出ている東京なので、都民もよく分かっている。都外への移動には気をつけてくださいと、配慮をお願いしたところ」
と、改めて自粛を呼びかけたのだ。
いったいなぜ、政府側は東京都に対してむき出しともいえる猛反発の姿勢を鮮明にし始めたのか。毎日新聞(7月7日付オンライン版)「小池知事と対立再燃? 県間移動、西村担当相『これまで通り自由』」が、こう伝える。
「政府は医療提供体制に余裕があることに加え、重症化しやすい高齢者の感染例が少ないことから、緊急事態宣言の再発令には慎重だ。感染拡大防止と経済活動との両立を目指す中で、小池氏の発言が『水を差した』ことに不満が高まっていた」
産経新聞(7月7日付オンライン版)「東京都、休業再要請に現実味 小池氏が対象を限った効果的な対策を検討」は、政府側の思惑を、もっと具体的に説明する。
「東京都の経済規模は実質国内総生産(GDP)の20%、神奈川・埼玉・千葉の周辺3県を含めれば34%を占め、緊急事態宣言の首都圏再発令のダメージは大きい。一方、小池氏は都民に対し、不要不急の他県への移動を控えるよう呼びかけている。打撃を受けた観光業界を支援する政府の『Go To キャンペーン』は夏休みの観光需要が高まる8月に開始する予定だが、国内人口の1割を占める都民が旅行を控えれば盛り上がりを欠く」
だから、小池知事に「余計なことをするな」と釘を刺したというわけだ。
しかし、東京都の感染拡大は首都圏だけでなく、全国の府県に脅威を与えている。各地の知事が「なるべく東京に行かないで」「行くときは注意して」と呼びかけている。