誰もうらやましがらない日本型雇用の成果
経験者ならよくわかると思うが、一般的な日本企業が外国人材を採用しようとすると、非常な苦労をともなう。
「世界標準の職務給と違い、採用後に任せる仕事が曖昧だから」
「裁量労働や在宅勤務などの柔軟な働き方が難しいから」
といった理由もあるが、やはりなんといっても「賃金水準が大きく劣るから」という理由が大きいように思う。
終身雇用のメリットを説明すればいいだろう、と思う人もいるかもしれないが、それで納得する外国人はまずいない。
「なんで失業時のリスクに労働者が忖度して賃上げを我慢しなきゃならないんだ。それは政府の仕事だろう?」
というのが、ふつうのホワイトカラーのスタンスである。
確かに、普段からめいっぱい貰えるものは貰いつつ、不況になったら政府に助けてもらうというのが最も合理的な考えだろう。
ついでに言えば、政策レベルでも、日本を見習おうとする国はどこにもない。日本の失業率の低さをうらやむことはあっても、規制で企業をがんじがらめにして雇用を守らせるようなことはない。恐らく、それをやったら自由な経済活動も消費も委縮し、結局は社会全体でツケを払うことになると、よく理解しているのだろう。
いや、世界中で日本の労使だけが、そのことを理解していないのかもしれない。今回のコロナ禍に際しても、見事な低失業率を前に、少なくない数の労使はホッと胸をなでおろしているように筆者には見えている。
「やはり安易な投資などすべきではなかったな。何事も現状第一だ」
「そうですね、我々労組も安易な賃上げなど求めません。下を見て満足しましょう」
筆者は現在、失業率は低いものの、賃金も物価も上がらず残業構造も大きくは変わらないというよく見慣れた光景が、この国ではまたしばらくの間続きそうな予感がしている。(城繁幸)