「定時に帰ってこい! 子どもができたのにのん気に残業する夫に腹が立つ」働くママの投稿が大激論 専門家に聞いた

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「子どもができたのに、独身時代と同じくのん気に残業する夫に腹が立つ!働き方変えて定時に帰れよ!」

   こんな働く女性の投稿が賛否両論を呼んでいる。

「鬼嫁か!」
「家族のために残業代を稼いでいる夫がかわいそう」

   と夫に同情する声が多い一方で、

「夫も早く帰って育児を手伝うべきだ」

   と女性に共感する意見も少なくない。

   専門家に聞くと――。

  • 働くママは大変、夫の応援が欲しい!
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「独身時代と変わらない仕事のやり方に腹が立つ」

   話題になっているのは、女性向けサイト「ガールズちゃんねる」(2020年2月6日付)の「残業する旦那に腹が立つ」というタイトルの投稿だ。

「正社員共働きで、3歳児を育てています。私は、能力の限りを尽くし、会社にも最大限協力してもらって定時を死守。子どもとの時間を作ることに全力を注いでいるのに、独身時代と変わらない仕事のやり方を続ける旦那に腹が立ちます。のんびり残業してンじゃねーよ、働き方考えろよ!とイライラしています」

   というのだった。

   投稿者は仕事の面では、よほど優秀な人物のようだ。こう続ける。

「仕事の効率化も考えずのんびり好きなように仕事して、終わらなかったら納得いくまで残業って、よい身分だね。私だって独身時代は同僚と切磋琢磨しながら仕事し、気になる案件があれば納得がいくまで残業しましたよ。でもさ、子どもが生まれたら違うでしょ、と。私だって、子どもが寝たあとに持ち帰った仕事をしたりしているよ。旦那には、残業が発生する前に何かやった?ということを言いたいの」

   というのであった。

   この投稿には、「家族のために残業して稼いでいる旦那がかわいそう」という反感が7割近く寄せられた。

「飲み会で遅くなるなら腹立つけど、仕事なら仕方ない。残業ならいいジャン。私の夫は私がパートに出るよりはるかに稼いでくる。残業はありがたいくらいだよ」
「みんながみんな自分の都合で定時上がりなんかできない。できたら苦労しないよ。帰りづらい社風もあるし、一方的にイライラされる旦那さんが可哀想」

「会社は女性には優しいが、男性には厳しいのですよ」

   それに、会社は女性には優しいが、男性には厳しいと指摘する声がとても多かった。

「女性は『育児がー』『保育園のお迎えがー』と言えば、会社も協力してくれるけど、男性の場合、『子ども産まれたので、残業なしでお願いしまーす!』は無理だと思うよ。正直、あなたが『母親』だから会社も最大限の協力してくれるけど、『父親』の旦那さんにそこまでの融通は利かせてもらえない場合のほうが多いよ」
「男性の育児休暇はたまに聞くようになったけど、時短は聞かない。育休とった同僚に聞いたけど、時短を申し出たら、中途半端に帰られても困るから人事異動を勧められらしい。それも出世コースからは離脱承知の雰囲気らしいよ。その点、男性は女性よりシビアだよね」

   また、こんな意見もあった。

「あなたの旦那さんだって、あなたのように定時で帰る子持ち女性社員の仕事のしわ寄せがきていて残業しているのかもよ」

   一方で、「投稿者の気持ちがよくわかる」という共感派も少なくなかった。

「同じ共働きなのに、『仕事だから仕方ない』と男のほうばかり優遇されているのはムカつくよね。奥さんだって仕事があっても子どもを優先にしているのだから、旦那だって早く帰ってくる努力くらい必要だよね。私ならサポートしてほしいと思ってしまう」
「残業で稼いでくれるという問題じゃない。子持ちになっても、旦那だけ当たり前のように前と同じペースで働き、妻ばかり子育ての負担を強いられるのは納得いかないと思う。お互い正社員でバリバリ働いていたならなおさらね」

   同じ境遇の人からこんな声が。

「小学校教員です。旦那は会社員。私の出勤する時間が早いため、朝は旦那が保育園に送っていきます。そのため私が頑張って定時に上がり、迎えに行きます。旦那は遅く帰ってきて残業代がつきます。私だって家に仕事を持ち帰り、子どもたちを寝かしつけた後や早朝に仕事をしていますが、残業代はつきません。それなのに、旦那が残業して帰ってきて『疲れた~』と言うと、私だって、できるものなら職場で残業して家に持って帰ってきたくないと思います」

   「私も共働きで、本当は残業したいのにお迎えの時間がギリギリだからみんなに謝って帰る。たまにはお迎えを代わって欲しいわ」

   J-CASTニュース会社ウォッチ編集部では、女性の働き方に詳しい、主婦に特化した就労支援サービスを展開するビースタイルグループの調査機関「しゅふJOB総研」の川上敬太郎所長に、今回の「のんびり残業する旦那に腹が立つ」論争について意見を求めた。

   ――今回の論争をお読みになって、率直にどんな感想を持ちましたか?

川上敬太郎さん「投稿者さんが怒りを感じている理由は、旦那さんが残業していることに対してではなく、『のんびり』残業していると感じてしまうことにあるのだと思います。一方で、仕事と子育てを両立させるために何かを犠牲にしなければならない、という考え方が当然のようになってしまっている現状の生きづらさ、切実さについても改めて感じさせられました」

   ――なるほど、「のんびり」ですか。投稿者への批判の多くは「旦那はのんびり残業しているのではなく、家族のために懸命に残業代を稼いでいるのに感謝の気持ちがない」というものです。こうした考え方についてはどう思いますか。

川上さん「残業代が入るのであれば、それ自体は喜ばしいことなのだと思いますが、そのことよりも早く帰ってきて欲しいという思いが強ければ、感謝の気持ちは湧いてこないかもしれません」

   ――また、投稿者への批判の中には「自分は定時に帰っていると自慢しているが、その分、同僚にしわ寄せをさせているのでは」という指摘もあります。

川上さん「定時とは勤務が終了する時刻なので、定時に帰ることが自慢と受け取られてしまう環境こそが、本来はおかしいはずです。残業ありきでなければ同僚にしわ寄せがいくとしたら、その仕事環境こそが問題にされるべきです。
とはいえ、そのような批判が出てしまうのは、定時に帰ることが難しい環境で働いている人がたくさんいるという現実があるからだと思います。投稿者さん自身も持ち帰り残業をしているようですが、持ち帰り残業を免罪符にせざるを得ないこと自体が、働きづらい環境にあることを象徴していると感じます」

「仕事と子育ての両立で何かを犠牲するのはおかしい」

残業が快感になる?(写真はイメージ)
残業が快感になる?(写真はイメージ)

   ――「女性(母親)は会社から優遇されるが、男性が定時に帰るのは難しい雰囲気がある。できたら苦労しない」という意見も多くありました。

川上さん「男性は働き女性は家庭を守る、という役割分担のイメージがまだ根強く残っている職場が多いと思います。女性は早く帰りやすい環境だ、とまでは思いませんが、やはり男性のほうがより職場の理解を得にくいという空気はあるのではないでしょうか。今は過渡期で、変わっていく最中なのだと思います」

   ―― 一方、ワーママの間では投稿者への共感が多いです。「残業代がどうのこのではなく、早く帰ってきてほしいのだ」という意見が代表的です。また、「男は仕事を理由に育児協力を逃れることが許されるが、女性には許されない。投稿者は仕事も育児も頑張っている」という応援の声も目立ちました。

川上さん「『早く帰ってきてほしい』というのは、育児という務めを共に果たして欲しいという妻からのメッセージであり、率直な気持ちなのだと思います。夫婦は家庭の共同運営者ですが、家庭は『稼ぎ』と『務め』を両輪にして運営していくものです。『残業代』と『早い帰宅』、それらのバランスをどうとっていくのがベストなのかを夫婦で話し合う必要があると思います。 家事育児の負担が、女性のほうに偏っているご家庭が多いのは事実です。一方で、男性は男性で背負っているものがあります。もし男性が『仕事を理由に育児協力を逃れることが許される』のだとしたら、女性は『育児を理由に家計を担う仕事から逃れることが許される』という面もあるはずです。それらはいずれも古い価値観による呪縛であり、それが救いになっているケースもあるかもしれませんが、今の生きづらさの原因の一つになっているように思います」

   ――確かにそうした古い考え方が夫婦を縛っている面がありますね。投稿者は今後、夫にどう接したらよいでしょうか。川上さんなら、どうアドバイスをしますか。

川上さん「育児はストレスにならないと書かれていることから、投稿者さんはお子さんを第一に考えて行動している方だとお見受けします。それが投稿者さんにとって、絶対に譲れない価値観であり一線なのかもしれません。夫は夫で、投稿者さんの気持ちが全てお子さんに注ぎ込まれているとしたら、じつは内心寂しい思いをしているかもしれません。
投稿者さんの夫は、そもそも残業したいのでしょうか。夫の言い分がわからないため、投稿者さんが一方的な感情をぶつけているようにも見えてしまいます。投稿者さんだけが犠牲になっているとしたら、明らかにおかしなことですが、夫もまたつらい思いに耐えているとしたら悲劇です。投稿者さんは、早く帰るよう努力して欲しいという気持ちを、ぜひ夫に伝えて欲しいと思います。素直な気持ちを夫と共有したうえで、協力して解決策を出していただきたいと思います」

(福田和郎)

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