混迷の米大統領選 「トランプ敗北」の可能性とそのシナリオを織り込んでないマーケット(志摩力男)

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「世界で最も重要な人物」は人口8000万人で決まる?

   民主党の強い州と共和党の強い州が概ね決まっており、民主党の強い州は「ブルー・ステート」と呼ばれ、太平洋・大西洋の両岸側に多く、一方、共和党の強い州は「レッド・ステート」と呼ばれ、米国の中央部に多くあります。

   「ブルー・ステート」の代表的な州はカリフォルニア州やニューヨーク州であり、こうした州ではどのような候補者でも大概民主党候補が勝ちます。「レッド・ステート」の代表はテキサス州やテネシー州ですが、たいがい共和党候補が勝ちます。

   大統領選挙ごとに民主党、共和党、どちらが勝つのかわからない州は「スイング・ステート」と呼ばれ、フロリダ、ミシガン、ウィスコンシン、ペンシルベニア、ノースキャロライナ、アリゾナ、ミネソタ、オハイオの各州が代表的です。

   極論すれば、世界で最も重要な人物といえる米国大統領は、人口にして8000万人ほどの、わずか数州の選挙結果によって決まるのです。前回の大統領選挙で、トランプ大統領はこの「スイング・ステート」のうち、ミネソタ州を除いて、すべて勝利しました。

   しかし、今回はこうした「スイング・ステート」においても、トランプ大統領は苦戦しています。英エコノミスト誌のサイトによると、アリゾナ、ノースキャロライナ、オハイオ、ジョージア各州の支持はまだ拮抗していますが、前回トランプ大統領が獲得した大票田であるフロリダやペンシルベニア州はバイデン支持となっており、今現時点で選挙を行えば、恐らくバイデン氏が勝つと予想されます。

参考リンク: https://projects.economist.com/us-2020-forecast/president?utm_campaign=us2020-forecast&utm_medium=social-organic&utm_source=twitter

   しかも今回は、絶対の「レッド・ステート」であったテキサス州までも民主党が勝つ可能性が出てきています。ブッシュ前大統領のお膝元ですが、ブッシュ元大統領はトランプ大統領に批判的です。近年の減税政策もあり、トヨタ自動車が米国本社をテキサス州に移したように、ベンチャー企業が集積し、人口が増え、白人比率が低下しているのですが、コロナ感染が拡大しており、ロックダウン的な政策が再度採られるかも知れない状況です。そうなると、自然と民主党に投票する人は増えるでしょう。

志摩力男(しま・りきお)
トレーダー
慶応大学経済学部卒。ゴールドマン・サックス、ドイツ証券など大手金融機関でプロップトレーダー、その後香港でマクロヘッジファンドマネジャー。独立後も、世界各地の有力トレーダーと交流し、現役トレーダーとして活躍中。
最近はトレーディング以外にも、メルマガやセミナー、講演会などで個人投資家をサポートする活動を開始。週刊東洋経済やマネーポストなど、ビジネス・マネー関連メディアにも寄稿する。
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