リモートワークがもたらす日本型経営の崩壊 とはいえ、欧米式も「疲れる」「馴染まず」でどうする?(小田切尚登)

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できるか!「日本型経営+欧米式リモート」のいいとこ取り改革

   たとえば、意思決定の問題である。日本企業ではコンセンサスが重視されるため、根回しを重ね、落としどころを探るというプロセスが欠かせない。最終的な成果は、誰か個人のものに帰属するのではなく、皆のものとなる。そして、その前提として同僚同士の深い信頼関係が構築されている必要がある。そこで、飲みニュケーションやさまざまな社内の催し物などが重要となる。ZOOMのみでのつながりで、濃密な人間関係を作り上げるのは困難であろう。

   では、これを良い機会に、日本の古いシステムを捨てて、欧米式のやり方に変えられるか、というと、それはほぼ不可能だろう。

   企業文化が技術の発達や環境の変化に応じて変化していくべきであるということは正しい。しかし、「日本式経営スタイルを捨てる」というのは、日本企業にとって革命とも言える変化である。何事もそうだが、捨てるのは可能でも、新しいやり方を築き上げるのはそれに比べてはるかに難しく時間がかかる。

   日本的な良さを失ってしまい、その一方で欧米的なドライなシステムも作れずに、あぶはち取らずになって落ちこぼれてしまう、という最悪なシナリオにならないか、心配される。

   コロナ対策は待ったなしである。魔法のような素晴らしい解決策があるわけではなく、我々は与えられた条件の中で、何とかうまく適応していくしかない。今まで色んな環境の変化に融通無碍に上手に対処してきた日本企業なので、今回も私の心配を他所に上手く凌いでくれればと期待したいところだ。

   ZOOMやスカイプなどに向いたやり方を取り入れつつ、伝統的な日本的経営の良さも維持できるような、いわば「いいとこ取りの改革」ができるかどうか、注目していきたい。(小田切尚登)

小田切 尚登(おだぎり・なおと)
小田切 尚登(おだぎり・なおと)
経済アナリスト
東京大学法学部卒業。バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバなど大手外資系金融機関4社で勤務した後に独立。現在、明治大学大学院兼任講師(担当は金融論とコミュニケーション)。ハーン銀行(モンゴル)独立取締役。経済誌に定期的に寄稿するほか、CNBCやBloombergTVなどの海外メディアへの出演も多数。音楽スペースのシンフォニー・サロン(門前仲町)を主宰し、ピアニストとしても活躍する。1957年生まれ。
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