リモートワークがもたらす日本型経営の崩壊 とはいえ、欧米式も「疲れる」「馴染まず」でどうする?(小田切尚登)

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欧米企業の大半が在宅勤務も生産性低下、「疲れた」

   ここで欧米企業のリモートワークの状況を見てみよう。もともとリモートワークは、欧米ではかなり広まっていた。2019年後半の時点で、すでに北米では3分の1程度、欧州では4分の1ほどの従業員がリモート勤務をしていた。欧米の企業は日本と異なり、基本的には職能的な集団であるので、従業員が物理的に一か所に集まることなく、それぞれが自宅で勤務するようになっても、それほど仕事への影響が大きくならないのではないかと思えるところだ。

   欧米企業の自宅勤務の実態について、Aternity社がさまざまな調査をしている。同社のデータによると、欧米の企業では新型コロナウイルスにより自宅勤務の割合が2020年3月半ばから急上昇していている。5月最初の2週間には、北米では約85%、欧州では76%がリモートで仕事をしていたという。つまり、大半の従業員が自宅勤務であるということだ。

   しかし、残念ながら生産性は顕著に下がっている。特にドイツとフランスでは55%も下がった。この低下の原因は複雑だが、とにかく疲れを訴える従業員が多いそうだ。また以前だったらオフィスで気軽に会話ができていたことも、オンラインだときちんと準備しないとならなくなり、手間が増えたといったこともある。

   リモートワークと親和性の高そうな欧米でさえこれだけ悪影響を受けるのだから、日本はより厳しい状況に置かれるであろうことは容易に想像できる。

   IT化の遅れなどの技術的な問題は早晩克服していくであろうが、日本の企業文化は組織の奥深く浸透しているものであり、それとの「相性」は容易に変えられるものではない。

小田切 尚登(おだぎり・なおと)
小田切 尚登(おだぎり・なおと)
経済アナリスト
東京大学法学部卒業。バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバなど大手外資系金融機関4社で勤務した後に独立。現在、明治大学大学院兼任講師(担当は金融論とコミュニケーション)。ハーン銀行(モンゴル)独立取締役。経済誌に定期的に寄稿するほか、CNBCやBloombergTVなどの海外メディアへの出演も多数。音楽スペースのシンフォニー・サロン(門前仲町)を主宰し、ピアニストとしても活躍する。1957年生まれ。
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