羊頭書房はすずらん通りを少し外れた、比較的静かな雰囲気の通りに店を構えている。
カラカラと引き戸を開けて店内へ入ると、目に入るのは背の高い本棚に整然と並べられた推理小説やSFの本だ。入り口付近の棚には主に翻訳物の文庫本が並び、店の奥に足を進めれば手品や囲碁将棋、洋書まで好奇心を刺激するさまざまな趣味の本が書棚に整列している。
「本当はもっと雑然としているほうが、古書店らしい趣があるのかもしれないけど......。私がやるとどうもこう、事務所っぽくなってしまうんです」と意外な悩みを漏らすのは、店主の河野宏さん。店の入り口すぐのレジから店内を眺めて、そう話す。
高校時代の友人との出会いがきっかけに
ここ神保町で営業を始めたのは2000年。古書店業に関わることになったきっかけを聞くと、羊頭書房のごく近所に店を構える「ビブリオ」店主の小野祥之さんとの意外な関係を教えてくれた。
「じつは彼とは高校時代の同級生で。将来古書店をやるという話をずっと聞いていました。本が好きだったこともあり、私も興味を持ち徐々に古書販売の世界に。いろいろなことを教わりました。彼との出会いがなかったら、この業界に飛び込むことはなかったと思いますよ」
学生時代の友人同士がこうして近所に、それぞれ店主として古書店を営んでいる。本の街神保町らしい、不思議な光景である。