初のアフリカ系大学長が語る「アフリカ系」であることに意味 日本のグローバル化の現状

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京都の「民泊反対」が示すこと......

   サコさんは、自らのこうした経験もあり、日本で教育に関わるようになってから「グローバル化」に注目するようになった。近年の大学の課題の一つに「学生たちがグローバル化された社会を、どう生きていくか」ということがある。

   「私が必ずお伝えしたいグローバル化の大前提は、『グローバル化』と『国際化』は異なるということ」とサコ学長。国際化は、国と国の関係を表すものであり、グローバル化は国家間の関係ではなく「私たち『個』が中心」。国際化が「20世紀型」であるのに対し、グローバル化は、もっと新しい「21世紀型」と説明する。

   21世紀には、ITの進化で流通する情報量が圧倒的に増えたこともあり、「個」をめぐる多様性(ダイバーシティ)に光が当てられるようになった。性別、人種、国籍、宗教、年齢、学歴、職歴など、さまざまなものが多様であることが認識されるようになった。その中で、「個と個がいかにして違いを認めて共生していく」ことがグローバル化だ。

   新型コロナの影響で人の交流や物流が滞り、国際化が一時鈍くなることはあるかもしれないが、今後、多様性や、さらには不確実性を秘めたグローバル化と向き合うことは避けて通れないことだとサコ学長は言う。

   サコさんの目からは、残念ながら、日本社会では多様性も認識されてはおらず、グローバル化が浸透していないことが「事実」だという。その証の一つが、京都の街なかでみかける「民泊反対」の貼り紙だという。

   反対住民らは、外国人が民家を購入して住むのではなく、民泊施設として提供していることに、「支配されているような恐怖感を覚え、拒否反応を示している」らしい。ただ、そういったことも、「コミュニティが弱体化していることの表れ」で、「異文化を受け入れるだけの基盤が失われてしまっている」とみている。

「外国人が入ってきても共存する自信があるコミュニティでは、わざわざ民泊に反対する理由がありません」

   日本のグローバル化のポイントは「メタモルフォーゼ」という。「メタモルフォーゼ」は「変化、変身」という意味だが、サコ学長は「自分自身を保ったまま、社会に適応した自分をつくる」、「中身を維持し、外側を変化させていく」という意味で使う。

   異なる社会や文化背景の人たちとかかわるときに、それを拒否するのではなく、「まったく異なる視点を持つ自分」を意識し、相手もそうであることを認識することが大切と説く。自身は日本国籍を取得したが、決して日本に同化したわけではないという。

「『これからの世界』生きる君に伝えたいこと」
ウスビ・サコ著
大和書房
税別1400円

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