日本はあえて韓国経済をつぶそうとしなかった
さて、「G7参加問題」と「WTO事務局長選」という政治分野で真っ向から激突している日本と韓国だが、経済分野では意外にクールな見方が広がっている。ちょうど7月1日は日本の輸出規制が始まって1年の節目だ。韓国紙の多くが1年間の経済戦争を振り返る特集企画を掲載しているが、「日本は本気で韓国をつぶそうとしなかった」とする韓国経済人のコメントが目立つのだ。
朝鮮日報(6月30日付)の「コラム:『勝ったとは絶対に書かないで』」では、同紙のソン・ホチョル産業2部長が、「日本が輸出規制した半導体部品の国産化に成功して『日本に勝った、勝った!』と有頂天になる韓国政治家が多い中、経済人の多くがむしろ『日本の手のひらの上で踊っていた』と見ている」現実をこう報告している。
「日本の輸出規制にもかかわらず、韓国の半導体は持ちこたえた。素材メーカーは相次いで国産化に成功した。供給先を失った日本の素材メーカーは業績が急激に悪化した。日本の経済報復を受けて立った韓国半導体の勝利ストーリーだ。スコアは1対0だ」
しかし、ソン・ホチョル記者が「日本の輸出規制1年」を取材すると、勝利の主人公であるサムスン電子、SKハイニックスは「どうか韓日の経済戦で完勝したとは書かないでほしい」と訴えたという。日本の第2次経済報復を触発しかねないという懸念だ。半導体業界は「日本は初めから半導体工場の稼働中断まで狙っていたとは思わない」と受け止めている。
たとえば、フォトレジストはベルギーから導入したが、そこは日本の素材メーカーとの合弁企業だ。日本政府は追加的な規制は取らなかった。フッ化水素は在庫がなくなるころに少しずつ許可した。半導体業界関係者は「半導体製造工程に使われる素材と化学薬品は数千種類あるが、今回すべて調査したところ、少量であるが代替不可能な日本製素材が輸出規制の3品目以外にも少なくなかった。日本政府が明らかに知っていて、輸出規制では放置したのではないかと思うと恐ろしい」と話した。
ソン・ホチョル記者は、こう結ぶのだ。
「日本が再び挑発に出れば、韓国の半導体は再び生き残りを懸けて戦い、それを克服するはずだ。しかし、なぜ政治がつくり出した韓日対立に半導体が駒として将棋盤に上がらなければならないのか。世界的な経済分業の体制下で半導体部品すべてを国産化するは不可能であるばかりか、あらゆる素材を自給自足することは『経済的鎖国』にすぎない。ある経済シンクタンク関係者は『第2次挑発の際にはリングの上に企業ではなく、政治と外交が上がらなければならない』」と指摘した。
中央日報(7月1日付)「コラム:『安倍逆風』結局は現実になったが...」で、同紙のチャン・ジョンフン産業2チーム長も、朝鮮日報のソン・ホチョル記者と同じ趣旨のことを書いている。
「日本の攻撃をうまく防御した韓国政府は自信に満ちている。しかしさらに掘り下げてみると短見で錯視にすぎない。素材を他国から導入した会社の出資構造をみると、日本の名前を容易に探すことができる。サムスンやSKハイニックスは世界最高だが、日本・米国・オランダ・中国などとクモの巣のように絡むサプライチェーンから離脱する瞬間、奈落に落ちる。日本は最も近い隣国であり、我々が必要とするものを最も多く持つ国だ。『安倍破産』にただ痛快な気分になり、瞬間の勝利に酔っている場合ではない。両国関係の復元は早いほど互いにウィンウィンだ。政治が意図を持って市場に介入した結果が破産という教訓さえ分かればそれで十分だ」
(福田和郎)