日本の輸出規制から始まった「日韓経済戦争」がちょうど1年を迎えたが、今度は第2ラウンドの「政治戦争」が勃発した。韓国のG7(先進7か国首脳会議)参加を日本が邪魔したというので、韓国中のメディアが怒り心頭に発している。
さらに、日本の輸出規制の先頭になって戦ってきた韓国政府高官が、なんと日韓の貿易紛争を裁く場であるWTO(世界貿易機関)の次期事務局長選に立候補。これも日本が邪魔しているというわけで、韓国の怒りの炎に油を注いでいる。
しかし、政治の場の戦争をよそに韓国の経済界ではクールに日本の実力を再評価する動きが起こっている。「日本は韓国をつぶそうと思えばできたのに、勝ちを譲ったようだ」というのだ。どういうことか、韓国紙で読み解くと――。
「日本の恥知らずの水準は全世界で最上位だ」
「韓国のG7入り問題」とは、2020年6月初めにトランプ米大統領が打ち出した「G7拡大構想」のこと。これまで先進7か国首脳会議(G7サミット)は、米国・ドイツ・英国・フランス・カナダ・イタリア・日本の7か国で開いてきた。トランプ大統領は今年9月以降に米国で開くG7では、「中国の将来について討議する」として、7か国に韓国・オーストラリア・インド・ロシア・ブラジルを加えて、G11あるいはG12体制に拡大したいと発表した。
米大統領選をにらみ、対中国強硬策の一環として中国包囲網を築くのが狙いだ。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は「喜んで招待に応じる」と舞い上がったのだが、日本が韓国の参加に反対し、妨害工作に出たと韓国側は受け止めている。
実際、共同通信(6月28日付)「日本、拡大G7の韓国参加に反対 対中、北朝鮮外交に懸念」や、毎日新聞(6月28日)「G7枠組み『維持が極めて重要』茂木外相、トランプ氏拡大構想に否定的』」などの報道によると、日本政府高官が米政府に対し、韓国の参加に反対する考えを伝えた。日本が反対したのは、北朝鮮や中国に対する韓国の外交姿勢がG7とは異なり、北朝鮮・中国寄りだということだったが、米政府高官は「トランプ大統領が最終判断する」と答えたという。
こうした「日本の仕打ち」に、韓国中のメディアが激怒した。文政権に近い左派紙のハンギョレ(6月30日付)「大統領府『韓国のG7参加に対する日本政府の反対は身勝手』『隣国としてありえない行動』」は、こう憤る。
「韓国大統領府が6月29日、韓国のG7への参加に否定的な態度を取っている日本政府に強い不快感を示した。1年間続いてきた輸出規制とボルトン前米大統領補佐官の回顧録からもわかるように、日本政府が執拗に朝鮮半島の平和プロセス(編集部注:文政権の北朝鮮寄りの政策のこと)を妨害したことに対し、腹を決めて批判を行った。大統領府高官は『文大統領が正式の招待を受けて参加意思を示したのに、日本政府がそれを妨害するのは非常に身勝手で、隣国としてありえない仕打ちだ』だと述べた」
韓国大統領府は積りに積もった怒りを吐き出した。日本が新型コロナを口実に輸出規制に関する両国の実務交渉を拒否したことについて、「協議する意思があればテレビ会議に応じることもできたはずだが、まったく誠意ある態度を示していない」と不満をあらわにした。さらに、日本政府が軍艦島炭鉱の国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産登録の際に、強制労働の事実を公示すると約束したのに無視し続けていることにも反発を募らせた。大統領府高官は、
「日本の恥知らずの水準は全世界で最上位圏に位置する」
と激怒するコメントを記者団に流した。また、与党・共に民主党幹部たちも記者会見を開き、
「日本の措置の裏には、韓国経済が日本を追い越すのではないかという恐れがある。安倍首相は度量が狭い。姑息な小国外交に怒りを覚える」
とののしったのだった。