2020年7月1日からのレジ袋有料化の義務化を前に、早くも多くの小売店からは反発の動きが出ている。
レジ袋の有料化は何を目指し、そして有料化することはできるのだろうか――。
レジ袋の有料化はG20唯一の成果だった
2019年6月28日、29日、日本では初めてのG20(20か国・地域)首脳会議が大阪で開催された。残念ながら特筆すべき成果はあげられなかったものの、唯一、成果らしきものと言えば、国際的に問題となっている海洋のプラスチックごみ(廃プラ)を「2050年までにゼロにする」目標を導入することで一致した点だった。
廃プラは、毎年少なくとも900万トン近くが海に流出し、海洋生物や地球環境にとって深刻な影響を与えているとされる。世界中が注目していたG20で、安倍晋三首相は「日本の知見を生かして、途上国の適切な廃棄物の管理などに貢献していく」と、高らかに宣言してみせた。
廃棄物資源循環学会の2017~18年の調査結果によると、廃プラの主要ごみであるレジ袋の一人当たりの使用枚数は、年間約150枚となっている。レジ袋については、世界60か国以上で規制が導入されており、日本でも、これまで何度も規制が検討されてきたが、決定的な決め手に欠けていた。
その結果、2019年3月 26 日に出された環境省中央環境審議会の答申「プラスチックの資源循環を総合的に推進するための戦略」には、「レジ袋の有料化義務化(無料配布禁止等)」が盛り込まれた。
だが、一概にレジ袋有料化といっても簡単ではない。レジ袋の製造業者にとっては確実に経営悪化につながり、事業を継続するための対応を行わなければならない。また、レジ袋以外もの、たとえば紙や布の袋の内側にプラスチックを使用しているもの、紙袋の外側をプラスチック袋で覆っているものなどを、どのような扱いにするのかという問題もある。
最も深刻な問題は、これまでレジ袋を無料で配布していた小売業者などの対応の複雑さだ。レジ袋を取り扱わない、あるいは有料化することが顧客の減少につながるのではないか、という懸念がある。
一方では、レジ袋を取り扱わない、あるいは有料化することは、それまでレジ袋にかかっていたコストが削減できるというメリットもあり、削減されたコスト分を他の方法で顧客に還元する方法も考えられる。
なぜ、「バイオマス素材30%配合」レジ袋は配っていいの?
こうしたさまざまな思惑が絡み合う中で、7月1日以降もレジ袋の無料を継続すると判断する企業が出始めている。真っ先に「レジ袋無料継続」を宣言したのは、北海道を営業基盤とするコンビニエンスストア、「セイコーマート」だった。同社では、レジ袋を有料化の対象外であるバイオマス素材を30%配合したレジ袋に切り替えることで無料を継続すると発表した。
これに呼応する形で、牛丼チェーン大手の吉野家やケンタッキーフライドチキンも、レジ袋を有料化の対象外であるバイオマス素材30%配合のレジ袋に切り替え、無料を継続すると意思表明した。
このような対応に、利用者側である顧客からはSNSなどで賛意を示すメッセージが多く寄せられている。
しかしその半面、バイオマス素材30%配合のレジ袋は、「これまでのレジ袋よりも価格が高く、2~5倍のコストアップにつながることから、対応は難しい」(個人経営のスーパーマーケット経営者)と、中小の小売店では頭を悩ませている。
大手チェーンと中小の小売店での対応力の差という問題とともに、「バイオマス素材を30%配合したレジ袋で無料が継続したとしても、いずれはコストアップ分が値上げという形で消費者に跳ね返ってくるのではないか」と危惧する声も聞かれる。
そもそも、レジ袋の有料化は安倍首相の海洋廃プラを「2050年までにゼロにする」という目標達成のために実施される。その一方で、バイオマス素材30%配合のレジ袋は、生分解性プラスチックではないため、自然に帰るというものではなく、処分する必要がある。バイオマス素材30%配合のレジ袋でも、川や海に捨てれば、海洋廃プラとなってしまうのだ。
それなのに、なぜバイオマス素材30%配合のレジ袋は無料配布が認められたのか――。じつは、それが定かではない。
海洋廃プラを2050年までにゼロにするのであれば、海に廃プラが入らないようにする、海洋廃プラを除去することが重要であり、レジ袋を「悪者」にしても目標達成は無理だろう。
たとえば、レジ袋を有料化することで小売店のコストダウンになる分を、海洋廃プラを除去する、あるいは海洋廃プラを未然に防ぐための対策に充てる資金にするなど、付け焼刃的ではなく、レジ袋有料化に納得できる方策を打ち出すべきではないか。(鷲尾香一)