外食業の飲食店や居酒屋などと同様に、新型コロナウイルスの影響を甚大に受けたのが、観光地やホテル・旅館、旅行代理店だ。政府の緊急事態宣言が解除され、また2020年6月19日には都道府県をまたぐ移動も可能になったものの、人出が「コロナ前」の状況に戻るには、なお時間を要する。
「新しい生活様式」の中で、どう事業を運営していくのか――。その模索を続けている。
器の手触りまで伝わるよう工夫したオンライン販売サイト
●陶器の祭典をオンライン販売で代替
茨城県中部の笠間市周辺を産地とする陶器、笠間焼。地域の観光資源でもあり、毎年ゴールデンウイークには笠間焼の祭典である「陶炎祭(ひまつり)」が催され、50万人が訪れる。
ところが、39回目となる2020年は新型コロナウイルスの影響で延期となり、陶芸家らが展示販売の機会を失い、愛好家は購入の場を持てないままだ。
このイベントの主催者、笠間焼協同組合は、愛好家に作品を購入してもらい、それにより陶芸家や組合員を救済する狙いから、笠間焼の作品販売サイト「かさまうつわ商店」を立ち上げた。6月29日から8月30日までの期間限定で販売する。
「かさまうつわ商店」には、100人を超える作家が1000点ほどの器を出品。陶炎祭に出品予定だった作品ばかりではなく、多彩なバリエーションを用意した。また、オンラインショップであることを生かして、作家名や器の種類の索引のほか、色や大きさ、形、用途などのカテゴリーが設けられている。作品の撮影にも、手触りが伝わるよう工夫している。
●旅行予約、前日キャンセルOKプランを新設
新型コロナウイルスの「感染第2波」への懸念もあり、夏休みを前にしながら旅行の計画を進められず、悩んでもいる人も少なくないはず。ジャパンリゾート株式会社(京都市)が運営する、京都・嵐山のホテル「ザ グランドウエスト嵐山」は、第2波懸念の中でもキャンセル料の心配なく旅行計画を立てられるようにと、新たに宿泊日前日までキャンセルを無料でできる宿泊プランの販売を開始した。6月26日の発表。
「前日までキャンセル無料宿泊プラン」は、新型コロナの感染が再拡大して自粛要請などがあったときのことを気にせず、予約できるよう企画した。
●幸楽苑、非接触ドライブスルー実験店を拡大
新型コロナウイルスの影響で飲食店は営業自粛を余儀なくされ、それをきっかけに、少なくない飲食店がテイクアウトやデリバリーへの転向や多角化経営への取り組みを始めた。
中華そばで知られる「幸楽苑」が選んだのは、ドライブスルー。幸楽苑ホールディングス(福島県郡山市)は7月1日から、ドライブスルー対応の実験店を、これまでの郡山市内4店舗に加え、群馬県内3店舗に拡大。さらに検証を進めることにした。6月29日の発表。
新型コロナウイルスの感染拡大で、飲食業では調理済みの食品を持ち帰る「中食」市場が拡大。幸楽苑では、店内で待つことがないなど「非接触型」がより進んだドライブスルーによる販売方法を開発。本社がある郡山の4店舗で5月27日から、創業以来初となるドライブスルーによるテイクアウトサービスを実施している。
新たに実験店を設ける群馬県は、運転免許保有率が全国1位で、薬局やクリーニング店など、さまざまな業態がドライブスルーに取り組んでいるドライブスルー激戦区。