東京五輪に暗雲? 新型コロナに感染したジョコビッチを世界中が「バカ者」と酷評するワケ(井津川倫子)

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   男子テニスの世界ランキング1位、ノバク・ジョコビッチ(33)が新型コロナウイルスに感染したことを公表。スポーツ界に激震が走っています。

   ジョコビッチが母国セルビアなどで主催した慈善大会で、参加した選手や家族らが相次いで感染。無観客ではなく、多くの観客が詰めかけ、選手同士がボディタッチをするなど、従来どおりの「完全」なスタイルの大会でしたが、改めてスポーツイベントの感染危険が浮き彫りなってしまいました。

   大会を決行したジョコビッチに批判が集まっていますが、果たして2021年の東京五輪は無事に開催できるのでしょうか?

  • ジョコビッチにテニス仲間が「バカ者」!(写真はイメージ)
    ジョコビッチにテニス仲間が「バカ者」!(写真はイメージ)
  • ジョコビッチにテニス仲間が「バカ者」!(写真はイメージ)

同情の声は皆無! テニス仲間からは「バカ者!」と罵声

   新型コロナウイルスが依然として世界中で猛威を振るうなか、テニスツアーも3月から中断していました。欧州各国でロックダウンの措置が緩和されたこともあり、「ファンに楽しみを届けたい」というジョコビッチの熱意で開催された今回のチャリティーマッチ。多くのトップ選手が参加しましたが、新型コロナの感染者が相次いだことから会期途中で打ち切りになってしまいました。

   自身の感染も明らかになったジョコビッチが謝罪コメントを公表しましたが、批判の嵐は収まる気配がありません。

Novak Djokovic: World number one 'so sorry' after testing positive for coronavirus
(世界1位のノバク・ジョコビッチは、コロナウイルス陽性が判明して「とても申し訳ない」と謝罪した:英国BBC放送)

   報道によると、ジョコビッチはウイルス検査で陽性反応を示したものの症状はなく、14日間の自主隔離に入るそうです。同じく、世界ランキング19位のグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)ら参加した3選手も検査で陽性が判明。さらにジョコビッチとディミトロフの各トレーナーやジョコビッチの妻も感染が確認されるなど、「クラスター」が発生したようです。

   じつは、今回の慈善大会の開催自体は禁止されてはいませんでした。クロアチアのロックダウン措置が緩和されたことで、選手たちには、ソーシャルディスタンスを保つなどのルールは義務づけられておらず、試合後には抱擁し合うなど「濃厚接触」する姿も見られました。

   ロックダウンが緩和されたとはいえ、現状、多くのスポーツイベントは「無観客」で実施されています。ところがこの大会は「無観客」ではなく、多くの観客が詰めかけて熱い声援を送っていました。写真を見る限り、観客席でマスクをしている人はほとんど見当たりません。

   大会前の記者会見の写真も見ましたが、狭い部屋に報道陣が密集していて、めちゃくちゃ「3密」ですし、誰もマスクをしていません。おそらく、ジョコビッチだけがルールを破ったとか無謀だったわけではなく、取り巻く環境が「ユルユル」で、社会全体の認識が甘かったのではないかと推測できます。

   それでも、今のところジョコビッチに対して同情する声は聞こえてきません。むしろ、参加選手たちと一緒にナイトパーティーで騒いでいたなどの情報が伝わり、選手仲間からもいっせいに非難されています。

   オーストラリアのニック・キリオスは「bone-headed decision」「バカ者の判断だ」と、痛烈に批判しました。

スポーツイベントへの影響必須で東京五輪にも暗雲か

   もちろん、ジョコビッチの対応は決して褒められたものではありませんが、なぜこれほどまでに、世界中で酷評されているのでしょうか?

   新型コロナウイルスの感染拡大で、テニスの大会は軒並み中止になっていました。初夏の風物詩、ウインブルドン大会も第二次世界大会以来の中止に。ロックダウン中は練習すら満足にできずに、先行きに不安を感じていた選手も多かったことでしょう。

   ロックダウンが緩和されて、ようやく9月に全米オープンが「無観客」で開催されることになりましたが、かねてから「新型コロナウイルスのワクチン接種に反対する」と表明していたジョコビッチは、厳格な新型コロナウイルスの感染予防対策が義務づけられた場合は「全米オープンに出場するかどうかわからない」と疑問を投げかけていたのです。

   皮肉なことに、今回の「集団感染」を受けて、スポーツイベントの開催はより厳しいルールが課せられることでしょう。すでに、8月の全米オープンを予定どおり実施していいのか、という声もあがっています。

   全米オープンだけではありません。今回の「集団感染」は来夏に予定されている東京五輪・パラリンピックの開催判断にも影響を与えることは間違いありません。もともとスポーツイベントでの感染拡大リスクは指摘されていましたが、図らずも危険性を「証明」してしまいました。

   この先、選手も観客も、健康リスクを冒してまで、疑わしい環境へ移動することにためらいを見せることでしょう。

   改めて浮き彫りになった新型コロナの威力は、恐る恐る日常に戻ろうとしていた私たちや、試合再開を待ち望んでいた選手たちに強烈なパンチを食らわせました。スポーツ界全体に影響を与えるであろうジョコビッチの感染。「同情票」が集まらないのも納得です。

   それでは、「今週のニュースな英語」「I am sorry」を使った表現を取り上げます。副詞を使って表現の幅を広げましょう。

   まずは、BBCの見出しから「so」を使った表現です。

I am so sorry
(本当に申し訳ありません)

「deeply」(深く)という副詞を使ってみましょう。

I am deeply sorry
(深くお詫びいたします)

「extremely」(極めて)という副詞を使うと、さらに「お詫び度」が増します。

I am extremely sorry
(大変申し訳ございません)

   最後に、公式サイトに掲載されたジョコビッチの声明をご紹介しましょう。ジョコビッチの軽率さをいくら非難しても事態は変わりません。緊急事態宣言が解除されても、ロックダウンが緩和されても、まだまだ新型コロナウイルスが存在しているという現実に、覚悟を決めて向き合うしかなさそうです。

Unfortunately, this virus is still present, and it is a new reality we are learning to cope and live with
(不幸なことに、このウイルスは依然として存在している。そして我々はこのウイルスと共に生き、対応しなければいけないというのが新たな現実だ)

(井津川倫子)

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井津川倫子(いつかわりんこ)
津田塾大学卒。日本企業に勤める現役サラリーウーマン。TOEIC(R)L&Rの最高スコア975点。海外駐在員として赴任したロンドンでは、イギリス式の英語学習法を体験。モットーは、「いくつになっても英語は上達できる」。英国BBC放送などの海外メディアから「使える英語」を拾うのが得意。教科書では学べないリアルな英語のおもしろさを伝えている。
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