近年のビジネス本では、よく「速さ」の重要性を強調している。グローバル化の中で競争相手が増え、交渉ごとでのレスポンスの素早さや即断即決が、ミッションの成否のカギとなることが多いからだ。
国際的なビジネスの現場では、高いレベルのコミュニケーション力が求められるのは言うまでもない。必要なのは、「うまい」英語だという。そう聞いて腰が引けてしまう人が少なくないかもしれないが、本書「ビジネス英語便利帳」(研究社)があれば大丈夫。まずは、これらをマネしなさいと、さまざまなビジネスシーン別の「正解」を盛り込んだ。
困ったときに役に立つ、まさに「便利帳」なのだ。
「ビジネス英語便利帳」(生駒隆一著、ケリー伊藤監修)研究社
即戦力として役に立つビジネス英語を伝授
「うまい」英語が必要とされる理由には、「速さ」を満たせる高いレベルのコミュニケーション力を持っている以外に、もう一つ理由がある。
言語や文化が違う、海外とのビジネスで重要なのは、メールやレター、議事録などの相互確認と合意内容の記録。誰にでも理解できる、やさしい単語やシンプルなフレーズを使いながら、相手に誤解を与えない「うまい」英語が必須になるという。
だが、グローバル人材に求められる「うまい」英語のレベルは、「TOEICのスコアが最低でも800点を超える基礎力」と本書はいうから、そう簡単に到達できるものではない。「うまい」英語に自信のない人のために、本書はこう宣言する。
「英語に自信のない者がどうやって目前の難局を乗り切ればよいのか。答えは簡単! 『正解』をマネすること。お手本をそのまま使うしかない。本書は、即戦力として役に立つビジネス英語の『正解』をできるだけコンパクトにまとめて、実用的であることを最大の特徴にしている」
使うと恥ずかしい?「ダメ表現」リストがおもしろい
「便利帳」といっても、A5判で124ページ建てというコンパクトなサイズ。研究社らしいといえるシンプルなデザインの装丁で、人によっては頼りなさを感じてしまうかもしれないが、それだけ実用性に徹した表れといえよう。
内容は大きく、「Part1ビジネス・メール」「Part2ビジネス電話」「Part3ビジネス・ミーティング」「Part4ビジネス英語の基本」――の4パートで構成されている。ビジネスでは「記録」が重要なことから、「Part1ビジネス・メール」に最も多く紙数が割かれている。
その「Part1、ビジネス・メール」は、「書き出しフレーズ」から、日本人には不慣れな「日時と数字の書き方」まで、正しい書き方をガイド。また、「社内にはびこるダメ表現」というリストもある。その中には、私たちが「正解」だと思って多用していたフレーズもあり、内心で「教えてくれて、ありがとう」とつぶやくことがあるかもしれない。
「ダメ表現」としてリストアップされているフレーズは、「古い」ことがダメな理由とされていることが多い。たとえば「kindly」。「どうぞ~してください」という意味で「You are kindly requested to...(どうぞ...していただけませんでしょうか)」のように使われるが、英語圏では現在は使われていないという。「Please...」を使うほうが適切なのだ。
たとえば、こんなダメ表現もあった。日本人によるビジネス・メールやレターでは、「Our Mr.Yamada will contact you」(弊社の山田が連絡を差し上げます)と表現されることが非常に多いが、じつはこの「Our+ Mr.(Mrs.)~」は誤り。正しくは「Mr. Yamada, our project manager, will contact you」だ。
著者の生駒隆一さんは、大手エンジニアリング会社で海外営業に従事した後にNTTグループ会社の海外展開に参画。1997年から長期にわたり米国勤務し帰国後はグローバル人材を育成に努めている。
監修者のケリー伊藤さんは、米ミネアポリスのニュース専門局で活躍した経験を持ち、日本では企業研修、執筆活動やオンライン指導を精力的に展開。著書に「英語ライティング講座入門」「英語ライティング実践講座」など、英語ライティング関連で多数ある。
「ビジネス英語便利帳」
生駒隆一著、ケリー伊藤監修
研究社
税別1200円