コロナショックで起こるパラダイムシフト
では、なぜこの時期に原点回帰なのでしょうか――。そこには「コロナショック」の到来が、少なからず影響していると思います。新型コロナショックは、ビジネス界に大きな変革をもたらす、パラダイムシフトであるからです。
産業革命以降、産業界のパラダイムシフトは常に技術革新が先行して構造改革に迫られる、という流れにありました。ところが、今回のコロナショックでは、まず「ニューノーマル」の名のもとに、新型コロナウイルスの感染を抑制する体制の構築という構造改革が有無をいわさぬ形で求められ、それを安定的に運用するための技術革新が後から着いていくという、大げさに申し上げれば、近代以降で人類が初めて求められる試練であるのです。
試練の時に何より重要なことは、組織内外からの求心力を落とさず、できることなら可能な限り高めるという観点での経営の舵取りです。
具体的には、組織の内部を不安に陥れないこと、外部の取引先や顧客には進むべき確固たる道筋を示し信頼感を損なわないこと、が必要なのです。
中小企業にとっても、長引くコロナショックの中にあって、「アフターコロナ」に向け社内を不安に陥れることなく、社外をしっかりとつなぎ止めるために考えるべき基本は同じでしょう。
未知の危機に面した時にこそ、今一度、創業の精神に鑑みて自社の存在価値やその社会的意義を再確認し、それを礎にして来るべき変革の時代をいかに生き抜いていくべきかを社内外に明確に示す。いち早く見える形でパラダイムシフト対策に動いた「吉田ソニー」の英断は、すべての企業経営者にとって大きなヒントになるのではないかと思っています。(大関暁夫)