似てるけど、ちょっと違う「MaaS」と「CASE」? 未来の交通機関の「正体」を理解する

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自動車メーカー主導の「CASE」

   さて、「CASE」はといえば、「クルマがインターネットにつながること」や、それによって「自動運転」、そしてシェアリング、電動化につながる取り組みをいう。自動運転の実用化が実現すれば、過疎地に住む高齢者は、自動運転のタクシーに移動手段を委ねることができるようになるだろう。

   CASEが提案しているのは、ITやICTの力で、駐車場で眠っているクルマをシェアリングで有効活用したり、電気自動車で地球環境への負荷を減らしたりすることにある。

   CASEを主導しているのが、マイカーの所有を前提に事業を考えている自動車メーカーのため、一見するとCASEとMaaSは対立する構図になるのだが、じつはMaaSはマイカーを否定しているわけではなく、マイカーの利用より便利で合理的な手段があることを示しているに過ぎない。

   つまり、地球環境のため、社会のムダを省くためという点では、同じ方向を向いているといえそうだ。

   日本でも国土交通省が先頭に立ち、自動車メーカーやIT企業などが名を連ねてMaaS事業の取り組みが始まっている。「MaaSの時代が本当に実現すれば、公共交通を使った移動の利便性が向上し、マイカーの維持費を中心とした交通費の削減にもつながる。マイカーが減少することで、道路の渋滞緩和は大気汚染の改善も期待される。また、高齢化が進む過疎地での交通弱者対策にも有効であり、交通事故の減少や駐車スペースの削減、人間優先の都市づくりにも役立つ」と考えられているからだ。

   本書では、MaaSとCASEを切り口に、日本でさまざまな取り組みを進める挑戦者たちのストーリーを紹介。登場者には、ベンチャー企業などの異業種からの参入も多く、キャスティングは多彩で、グングンと読み進められる。なかには、過疎地域で遠隔診療ができる移動診療車のストーリーなど、偶然ではあるが、「ウィズ・コロナ」の時代にフィットしそうなタイムリーなテーマも盛られている。

   著者の中村尚樹さんは、NHK記者を経て、現在はフリーランスのジャーナリスト。専修大学社会科学研究所客員研究員、法政大学社会学部非常勤講師を務めながら、さまざまなテーマで取材・執筆活動を行っている。

「ストーリーで理解する 日本一わかりやすいMaaS & CASE」
中村尚樹著
プレジデント社
税別1800円

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