「ハケンの品格」でわかった!「ハニートラップだ!」と主張するセクハラ加害者の「頭ん中」(生野あん子)

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さすが! セクハラ問題を真っ向から取り上げる勇気

   さらにセクハラが人事部に伝わると、上司は「言い寄ってきたのは彼女だ! 胸元が空いた服装で、俺を誘っていた!」と、セクハラ加害者の「伝家の宝刀=ハニートラップ」を持ち出し、亜紀を糾弾するのです。

   近年、セクハラを訴える女性に対し、「ハニートラップだ」と攻撃する風潮が高まっています。日本で初めて「セクハラ」が裁判で争われた平成元年(1989年)から、こうした風潮はありましたが、SNSが発達した現在、ますますそうしたケースが増えているように思います。

   つい先日も、有名な編集者がセクハラを告発され、「これはトラップだ」とも取れる内容のツイートをしたことが話題になりました(ツイートは後に削除)。スクープ誌に掲載されたものを読む限り、被害者女性はやんわりと誘いを断っているふうでしたが、加害者にはまったく伝わっていないようでしたね。

   上下関係を利用した性的嫌がらせ=セクハラが起こりやすいのは、とにもかくにも「被害者の立場が弱いから」です。被害者は自分の立場を守るため、イヤなことがあってもハッキリと拒絶できないんですね。だから一見すると、ニコニコして「喜んでいる」ようにすら見える。実際は「ハケンの品格」の亜紀のように、なんとか穏便に断ろうとしているのですが、加害者はその笑顔だけを見て「本当に喜んでいるんだ」と、都合よく解釈するんですね。被害者は、なんとか加害者を怒らせまいと、必死で笑顔を作っているだけなのに......。

   この構造を真っ向から取り上げた、中園ミホさんの脚本は、さすがというほかありません。ここ10年ほどで、セクハラをめぐる企業の状況は大きく変化しましたが、セクハラが生まれやすい根本的な構造は変わらないままだからです。

   上下関係と、勘違いを助長させるコミュニケーション、そして「ハニートラップ」という攻撃が正当化される風潮は、令和2年の今も日本社会を覆っている。そんな現状への批判意識が見て取れた第1話でした。(生野あん子)

◆ 水曜ドラマ ハケンの品格 ◆
日本テレビ系。毎週水曜日22時から。主演は篠原涼子。第1作は2007年1月10日から3月14日まで。13年ぶりのシリーズ2作目。2020年6月17日放送の第1話は、平均視聴率が14.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と2ケタを記録し、好スタートを切った。
かつての勢いを失い、社員たちの覇気が下がりぎみの食品商社「S&F」で、再び伝説のスーパーハケンの大前春子(篠原涼子)が、「私を雇って後悔はさせません」「3か月間お時給の分はしっかり働かせていただきます」と、奮闘する。

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生野あん子(しょうの・あんこ)
30歳代の会社員。映画、小説、ドラマなど、どんなコンテンツにもつい、社会的背景を思い描いて批評しようとする精神性の持ち主。
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