みなさん、こんにちは。馬医金満です。
今回は経営的なケーススタディとして、最近のアパホテルの経営戦略について書こうと思います。
アパホテルは2020年5月10日から6月30日まで、「新型コロナウイルスに負けるなキャンペーン」を実施。どのホテルでも、1泊2500円で泊まれるという施策を打って、大変注目されています。
この大胆な施策を打つためには、潤沢な資金力(不確かですが、アパホテルは向こう5年間持ちこたえられるだけの資金があるということのようです)と精密な価格戦略によって成り立っているといえそうです。その価格戦略について、詳しくみてみます。
キャンペーン価格は「ダイナミックプライシング」に基づく
アパホテルの価格戦略は、もともと需給によって宿泊価格を柔軟に変える「ダイナミックプライシング」が有名です。
一時、大阪ではアパホテルが一泊4万円という日があったそうです。ただ、この価格はアパホテルが「ぼったくり」なのではなく、需要と供給が均衡している価格が、その水準にあるということなのです。
つまり、今回の「新型コロナウイルスに負けるなキャンペーン」に関しては、需要の減退に柔軟に対応して、赤字でも宣伝効果も考えれば、空室よりはマシという経営判断のもとに実施されたと考えています。
このような価格設定方法は「ロードプライシング」と呼ばれており、高速道路や鉄道料金でも実際に導入されています。硬直的な価格設定に比べて、経済学的にも意味があるともされています。
また、アパホテルは自社のECサイトにも力を入れています。同社は「アパ直」と呼ばれる自社サイトからのダイレクト販売を、「最安値保証」で提供することで、販売手数料の支払いを抑え、宿泊客との直接のコミュニケーションを促進しようとしています。
「最安値保証」でユーザーを自社ECに誘導するワケ?
最近の旅館予約では、一般的に仲介サイトを通じて予約する場合がほとんどで、その際にホテル側はかなりの割合の中抜きをされているといわれています。それに対抗するために、「最安値保証」というプライオリティの高いサービスで、ユーザーに自社サイトからの予約を促し、自社の利益を最大化するという戦略を敷いているものと、認識しています。
アパホテルの強みは、競合他社と比べたときの圧倒的な価格設定とサービスの差別化だと考えています。コロナ禍は「第2波」が懸念されており、引き続き厳しい宿泊マーケットが続きそうななか、少なくない脱落者が出そうですが、市場の予想よりも観光需要の回復は前倒しになるかもしれません。そうなれば、アパホテルはその恩恵を最大限に受け、さらにシェアを拡大していくだろうと考えています。
みなさん、いかがでしょうか。
一般的に、アパホテルには派手なテレビCMや有名社長の存在が大きいイメージがあるかもしれませんが、生死を分けかねないプライシングでは、かなり緻密な戦略を策定している会社であるとわかります。
では、また!(馬医金満)