少子高齢化が進む中で、労働力の外国人依存が高まっており、近年は新卒採用でも外国人留学生が一定の割合を占めるようになっている。
総合人材サービスのパーソルキャリアの若年層向キャリア教育支援プロジェクト「CAMP(キャンプ)」と、パーソル総合研究所が行った「留学生の就職活動と入社後の実態に関する定量調査」によると、留学生の多くが日本型の雇用や就職活動のあり方にさまざまな違和感を抱いており、そのことが就職後の定着や活躍に影響していることがわかった。
新卒の一括採用、就活ルールになぜ?
調査では、就職活動や企業のあり方について、留学生からさまざまな、強い違和感が表明された。
就職後の職場では、
「定年までの雇用が前提とされていること(終身雇用)」(62.6%)
「自分が希望しないかたちで転勤・異動があること」(59.5%)
「勤続年数に応じて賃金が上がる仕組みがあること(年功賃金)」(54.0%)
などがそれ。
新卒の採用基準では、
「具体的な技能・スキルが求められないこと」(56.2%)
「資格が重視されないこと」(56.0%)
などについて、納得しかねるようだ。
日本独特とされる「新卒一括採用」についても同様。「新卒者をまとめて採用する仕組みがあること」に対して65.4%が違和感を持ったことを明かし、「選考開始、内定出しのタイミングにルールがあること」(62.1%)や「4月入社が一般的であること」(59.3%)に、「しっくりしない」と感じていた外国人留学生が多かった。
ただ、日本型雇用や就活に違和感を持ちながらも、外国人留学生の入社企業に対する満足度は日本人より高く、内定直後には96.4%が「満足」と答えている(日本人73.5%)。その後、満足度は入社3年以内に70.3%まで低下するが、この時点でも日本人(46.8%)を大きく上回る状況は変わっていない。
外国人留学生の定着は企業側の制度や組織マネジメントの問題
もちろん、不満もある。外国人留学生が入社後に不満を感じる点としてあげたのは、
「労働時間が長い」(51.5%)
「サービス残業が多い」(42.5%)
「休暇がとりにくい」(38.5%)
いった就業環境や、
「与えられている裁量や権限が小さい」(31.0%)
と、若いうちから活躍しやすい環境でないことが指摘された。
加えて、外国人留学生は日本人と比べて、独立志向が非常に強い。「将来、独立したい」と考える留学生は58.9%で、日本人(23.3%)の2.5倍にあたる。就労環境に不満が募ったところで、独立を叶えられる機会があれば、企業にとっては優秀な戦力を失い兼ねないといえる。
パーソル総合研究所の上席主任研究員、小林祐児氏は「優秀な留学生を獲得したい企業はまず、形式張ったマナー重視の就職活動ではなく、より具体的な能力やスキルを見極める方向に舵を切るべき」と指摘。留学生を意識した情報提供や機会創出など、日本人とは異なる取り組みが効果を発揮するのではないかという。
小林氏はまた、「定着するかどうかは留学生のマインドの問題ではなく、企業側の制度や組織マネジメントの問題として捉えるべき。労働時間や裁量・権限、報酬などを改善すれば、自社への定着・安定的に活躍してくれることが示唆された。現状では、言語サポートや制度整備なども不十分であり、今後の外国人材との協働のためにも、一層の充実が求められる」とも述べている。
なお調査は、2020年2月14日~3月2日に、大学・大学院に通う外国籍の学生300人と、日本の大学を卒業して就いた初職で正社員5年以内の200人を対象に実施。6月18日、パーソルキャリアが結果を発表した。