「日常」と「非日常」はすっかり入れ替わってしまった。
今、わたしたちの目の前に広がっているのは、つい3か月前までは想像もしていなかった世界である。新型コロナウイルスは、わたしたちの「日常」にたくさんの変化をもたらした。
外出は必要最小限に。会社の会議や、学校の授業はリモートで。テレビを観ても、ラジオを聴いても、「リモート収録」なんて耳慣れない言葉が飛び交う。
そんな「非日常」が「新しい日常」として、なんとなく定着してきた梅雨の日の午後。お気に入りの音楽を流しながら、ふと思った。コロナを機に、日本の就活ルールに変化が起きるのでは!?
「よーい、ドン!」の就活をコロナが崩した!
はじめに言っておくと、わたしは現状の日本の就活ルールは変化が必要である、と以前から感じていた。日本経済団体連合会によって、就活スケジュール(2020年度にスケジュールは廃止されたものの、現状では大きな変化はなかった)が決められ、「新卒一括採用」が当たり前。一度入社したら、その会社に長く勤めることが「良いこと」であるという風潮。すなわち、就活の結果、新卒で入社する会社で「人生が決まって」しまう――。
もちろん、通年採用を実施している会社や、会社に長く勤めることを「良いこと」でも「悪いこと」でもないとしている会社があるのも事実だけれど、まだまだポピュラーではない。そんな就活に、わたしは何とも言えない違和感を抱いていた。
そんななか、新型コロナウイルスが猛威を振るいはじめた。会社の説明会や面接、合同説明会は軒並み中止や延期、もしくはオンラインへと移行していった。刻々と状況が変化する今年の就活。そこに、いくつかの「変化のタネ」を見つけた。
その一つが、経団連の就活スケジュールが機能しなくなったことである。これには未曾有の緊急事態という状況の中で、「結果としてそうなってしまった」感は否めないし、だからこそ多くの就活生が困惑しているというのも理解している。
でも、本来の就職活動って、「働きたい」「自分の将来と向き合わなきゃ」と思ったタイミングに、「自分がしたいから」するものなのではないだろうか。大学在学中の早いうちから「働く」ことを考える人は、そのタイミングで就活やインターンシップをはじめればいいし、「まだわからない」と悩める人や、「在学中に卒業後の道を決められなかった」という人は、卒業後にそれからの生き方を考えるのもいい。
決められたスケジュールという枠の中で、みんな一斉に「よーい、ドン!」ではじまる現行の就活システムは、あまりにも画一的だと思う。
就活の「変化のタネ」が芽吹いてきた
もちろん、こういった現行の就活システムを変えていくためには、日本社会全体の認識や理解、企業の採用ルールなどを根本から変えていく必要があり、ひと筋縄ではいかない問題でもある。
けれども、新型コロナウイルスの影響によって、期せずしてもたらされたこうした変化は、来年以降の就活生の就活の在り方や、企業側の採用方法の見直しを余儀なくされるものになるように思える。
今年の就活の中で見つけた「変化のタネ」は、まだある。それは何と言っても、就活のあらゆるプロセスがオンライン化したことである。説明会もオンライン、面接もオンライン。「対面にはやっぱり叶わないなぁ」と思う部分もあるけれど、メリットもたくさんある。
交通費は浮くし、遠方からの学生も参加しやすい。「とりあえずちょっとだけ、話聞いてみたいかも......」的な企業の説明会にも参加しやすい。
もう一つ、うれしいのは履歴書のWEB提出が増えている気がすること。頑張って書いた履歴書の、最後の最後でミスる経験をしたことがある人は、このうれしさに共感してくれるだろう。あのイライラとは、このまま永遠におさらばしたい、と半ば本気で思っている。
「非日常」が「日常」になりつつある中で見つけた、たくさんの「変化のタネ」。新しいタネたちは、今後の就活にどのような変化をもたらすのだろうか。「これまでの就活」と「今年の就活」の良いところがミックスされた、「これからの就活」が作り上げられていくといいな。
期待と不安が入り混じりつつ、「変化のタネ」が芽吹くのを待ってみることにする。(叶多凛)