労基署が認定、時間外労働にテレワーク分が含まれない
労基署は、発症の直前1か月の時間外労働が(過労死ラインの月80時間を超えて)139時間に及び、精神疾患を引き起こしたと認定したのだ。
しかし、朝日新聞(6月18日付)「三菱自社員が『過労自殺』労災認定 土日・社外で仕事」によると、時間外労働はもっと多かった可能性があると指摘する。
「代理人の川人博弁護士によると、労基署が認定した時間外労働には、遺族側が主張したテレワーク分はほぼ含まれなかった。川人弁護士は、上司から具体的な仕事の命令があって客観的成果がわかる場合を除き、自宅などの職場外での仕事は、労働時間として認められにくい面があるのではないか。そのため、いま新型コロナウイルス対策でテレワークが推進されていることにも警鐘を鳴らした」
というのだ。さらに、朝日新聞はこう続ける。
「労働政策研究・研修機構の働き手への調査によると、テレワークのデメリットは『仕事と仕事以外の切り分けが難しい』『長時間労働になりやすい』の順に多かった。川人弁護士は『(テレワークで)長時間労働が生じる危険性がいっそう高まっている。労災認定の現場では、残業時間として認められないおそれがある。経営者は、自宅での長時間労働が発生しないように、労務管理をしっかり行うべきだ』と呼びかけた」
このニュースについて、ネット上ではこんな声があふれた。
労働相談が中心のNPO法人POSSE(ポッセ)代表で雇用・労働政策研究者の今野晴貴氏は、こう書いた。
「2014年に過労死等防止対策推進法が成立したが、過労死は一向になくなっていない。毎年200人ほどが国から過労死と認定され、昨年度は158人であった。背後にあるのは際限のない長時間労働だ。最近ではコロナ対策に従事している医療関係者や行政職員が、過労死ラインの月80時間を超える残業に従事している。ほとんどの過労死遺族は会社から証拠隠滅などを受け、労災申請を『邪魔』されており、長時間労働を証明できずに労災認定を受けられないでいる。報道で明らかになるケースは、あくまで氷山の一角だ。『過労死かもしれない』と思ったら、すぐにNPOや労働組合、弁護士に相談してほしい」
こんな声もある。
「今までで数度だけだが、月100時間超えの時間外労働を経験したことがある。若かったがマジで身も心もボロボロになった。130時間以上なんて、正気の沙汰じゃない。亡くなった方が気の毒でならない。そこまでして働かないといけないのなら、働かせる会社や世の中のほうが間違っている」
さらにテレワークに関しては、こんな意見もあった。
「正直、家で仕事しているほうが、成果がきちんと見えてしまうので時間なんて関係なくなるね。会社で周りに頼んでいた仕事だって、全部自分で提出できるところまで作らなきゃならない。結果を出すまで時間がかかるのは個人の能力でしかない。誰も自分を注意してくれる人が家にいない。在宅勤務だと、長時間勤務をしているという考え自体がなくなっていく気がする」