「1年後に失業率の未曽有の悪化がやってくる」
「1年後に失業率の未曽有の悪化がやってくる」と警鐘を鳴らすのは野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミスト・木内登英氏だ。「木内登英の経済の潮流 ―これから本格化する国内雇用情勢の未曽有の悪化」(2020年6月15日付)というリポートで、こう指摘する。
「5月25日に緊急事態宣言が全面的に解除され、個人消費はとりあえず底を打ちつつある。しかし、日本の雇用情勢の未曽有の悪化は、まさにこれから本格化していく。その中で『隠れ休業者』の救済が喫緊の政策課題となるだろう」
「隠れ休業者」とは何だろうか――。
「米国にはレイオフ(一時帰休)制度がある。自動車などの製造業には、経営環境が改善した際に再雇用することを前提に解雇の慣例がある。レイオフされた労働者は、失業保険を申請して失業者となるが、職探しをすることなく、同じ企業に再雇用されることを待つ。ここに、米国で労働市場がダイナミックに変化する理由がある」
ところが日本では、再雇用を前提に解雇された人には、原則、失業手当を受給する資格が与えられない。米国のレイオフ制度に近いのは、日本では休業制度だ。自宅待機を命じられ、企業から休業手当を受け取る休業者の数は4月に597万人と、前月から350万人も急増した。
木内登英氏は、こう続ける。
「こうした会社都合の休業者は、失業予備軍だ。会社が休業手当を払い続ける余裕がなくなる、あるいは倒産となれば、休業者は失業者となってしまう。厳しい経済情勢が続けば、時間差を持って大量の失業者が生じてくる。その失業率のピークが来年前半になる。その時の失業率は6%程度に達するだろう」
と予想するのだった。
ところで今、政府が最も手を差し伸べる必要があるのは、じつはこうした休業者や失業者ではない。企業との雇用契約は維持されながらも休業者とはなっていない、いわば「隠れ休業者」だという。
「隠れ休業者」は自宅待機を求められて休業状態にあるのに、企業からの休業手当も失業手当も、どちらも受け取れない人々だ。労働基準法は、経営悪化など会社側の都合で従業員を休業させる場合には、平均給与の6割以上を支払うことを企業に義務付けているが、実際には休業手当が支払われていない「隠れ休業者」が相当数存在する。
木内登英氏は、こういう人々にこそ「雇用調整助成金制度」を本人が申請できるようにして、いますぐ手厚く支給しないと、日本経済が大変なことになると警告している。
(福田和郎)