【襲来!新型コロナウイルス】「未曽有の失業者がでる」「ワクチン開発進まず」「米中激突」... 1年後はお先真っ暗? シンクタンク予想を読み解く

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東証株価指数がリーマン・ショック後と似た展開

   そして、井出真吾氏独自の分析として、上場企業の3月期決算発表が一巡した段階での計1262 社の「業績予想」を取り上げた。今期(2020年度)の業績予想を「未定」と「減益」した企業が 1096社(全体の83%)にのぼった一方、「増益予想」とした企業も166社(同13%)あったのだ。

   ところが、この「増益予想」の企業もよく調べると、決して油断できない厳しい状況だということがわかったという。

   「一般に『保守的』とされる日本企業がコロナ禍の中でも『増益予想』を発表したことで、投資家の買い注文が向かったとみられる。しかし、先行きは楽観できない。というのも直近3年間について検証すると、2020 年度『増益予想』とした166社は、過去に期初予想と比べて期末実績が下振れする傾向があったからだ=下図参照

(図表)「増益予想」の企業が実は下振れが多く、油断できない(ニッセイ基礎研究所の井出真吾氏作成「2020年度『増益予想』の企業は業績の下振れ傾向があった」)
(図表)「増益予想」の企業が実は下振れが多く、油断できない(ニッセイ基礎研究所の井出真吾氏作成「2020年度『増益予想』の企業は業績の下振れ傾向があった」)

   つまり、当初は調子のいいことを言っておきながら、期末実績には下方修正する常連が多いというわけだ。

「この背景を探るため、166 社について業種別に集計すると、下振れした企業の割合が大きい業種には、素材・化学、電機・精密など海外景気に敏感な輸出関連という共通項が浮かび上がった。また、食品、建設・資材、小売、銀行という国内景気の影響を受けやすい業種も目立つ」

   こうした企業は、コロナ禍の今後の展開によっては、不確実要因が高く、一進一退といった展開が想定され、株高を維持するのは難しい。だから、個別企業の業績動向を丁寧にフォローする姿勢が重要性を増していると指摘するのだ。

   「現在の期待先行の株高はもってもせいぜい1年」と厳しい見方を示すのは、同じニッセイ基礎研究所の准主任研究員・前山裕亮氏だ。「期待先行の株高はもって1年 ~リーマン・ショック後と似た展開となった日本株式~」(2020年6月15日付)というリポートで、こう説明する。

「日本株式は経済活動を再開する動きを好感して、5月中旬から急速に上昇した。TOPIX(東証株価指数)は6月4日には1600ポイントを回復した。11、12 日に下落して1600ポイントは下回ったが、引き続き1500ポイント台後半で高値圏にある」

   しかし、安心してはいけない。実はリーマン・ショック後と似た展開になっているというのだ。前山裕亮氏TOPIXの予想ROE(自己資本利益率)の動きと、株主資本利益率(ROE)という個別銘柄を評価する指標の動きを詳しく調べた。すると、リーマン・ショック時の動きと同じ展開になっているのだ=図表2参照

(図表2)リーマン・ショック時と似た動きのROEとPBR(ニッセイ基礎研究所の前山裕亮氏作成)
(図表2)リーマン・ショック時と似た動きのROEとPBR(ニッセイ基礎研究所の前山裕亮氏作成)

   このから将来を予測すると、こうなる。

「期待先行は長くても1年だろう。この株高がいつまで続くかは、やはり株価急落の直接的な要因となった新型コロナ状況次第だ。リーマン・ショック後は予想ROEの急回復と高PBRの期間が1年ほど続いた。リーマン・ショック後と現在の状況が明らかに異なるのは、新型コロナは現在進行形の問題であり、本当に期待しているような企業業績の急回復自体が起こるかどうか、わかりかねる点だ。
新型コロナの治療薬やワクチンなどの抜本的な解決策が2020年度中に出てこなければ、2021年度に入っても企業の本格的な業績回復は見込めない。そのため、期待先行の株高はリーマン・ショック後と同じでよくても1年程度で終わる見込みが強い」
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