同僚女性の「あれは立派なセクハラ」のひと言に押されて......
その後もR美さんは、その男性上司の理解のもと、派遣社員として仕事を続けていました。そして、ある時......。
「一対一でのディナーに誘われました。向こうがどのようなお気持ちで誘ってきたのかはわかりません。ただ、その上司からディナーに誘われた時は、『信頼していたのに、この人もそういう目で見ていたの?』と、ちょっとショックでした。とはいえ、食事のお誘いを丁重にお断りしましたら、それ以上はしつこく誘って来なかったですし、仕事上での態度も変わらず誠実でしたので、いつしかそのことは忘れていました」
しかし、会社という狭い環境の中では、誰が誰を誘ったという噂は、当人たちも知らないうちにどこかしらで立つものです。その男性上司がR美さんを食事に誘ったという噂は、同じ部署の人たちの耳にも入っていました。
「あるとき同僚の女性から、一対一の食事に誘われたことに、『あの上司はR美さんが派遣だから、なめてかかってるんですよ。このまま黙ってるつもりなんですか? R美さんはあまりピンと来てないのかもしれませんが、職場の女性に対して一対一のディナーに誘ってくるなんて、これは立派なセクハラです』と言われたんですね。
私は『セクハラ』と認識していなかったので、そんなふうに言われてひるんでしまったんです。その同僚女性からは、『R美さんは社会人経験が少ないからハラスメントに対する意識が低いんです』とか、『このまま黙っていたら、向こうの思うつぼですよ』などと、畳みかけるように言われました。私も、『リハビリ社会人』という負い目があったので、その女性の言うことがいちいちもっともに思えて」
結局、R美さんは、同僚女性の「あれは立派なセクハラだ」という言葉に引きずられ、自分自身は上司の行為をセクハラと思っていなかったにも関わらず、その男性上司をセクハラの加害者として人事部に訴えてしまったのです。
行為に悪質性はないという人事部の判断で、その上司への口頭注意という処置で終わりましたが、R美さんは職場内で「ちょっと食事に誘っただけでセクハラと大騒ぎする地雷キャラ」という噂を立てられ、結果的にそれを苦にして自ら派遣の更新打ち切りを申し出たそうです。