会社に止められていた「夜の街」に行ってしまった! ええ、でもそれで解雇って、ちょっと待ってよ

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   新型コロナウイルスの感染拡大は「第2波」が懸念されているものの、ようやく経済活動が再開されました。最近は「アフターコロナ」という言葉をよく耳にするようになり、会社も少しずつ出社する日数や社員の数を増やしているようです。

   とはいえ、新型コロナウイルスは現在でも、感染者は少しですが出ている状況で、会社内で新型コロナウイルスの感染トラブルが発生する可能性がないとは言いきれないのではないでしょうか。なかでも、心配されているのが「夜の街」。そこで今回は、今後起こりそうな「コロナトラブル」を、闘う弁護士、グラディアトル法律事務所の井上圭章弁護士に聞きました。

  • 会社に止められていた「夜の街」に行ってしまったら……(写真は、東京・新宿 歌舞伎町)
    会社に止められていた「夜の街」に行ってしまったら……(写真は、東京・新宿 歌舞伎町)
  • 会社に止められていた「夜の街」に行ってしまったら……(写真は、東京・新宿 歌舞伎町)

そもそも「夜の街」に行っても業務命令違反ではない

闘う弁護士先生
ナイトクラブやキャバクラ、居酒屋やスナック、バーが立ち並ぶ東京・新宿の歌舞伎町は、新型コロナウイルスの感染者が少なくない「夜の街」と、小池百合子都知事に名指しされ、警戒されています。
会社から、そんな「夜の街」のクラブやスナック、バーには行かないようにと命令があったにも関わらず、つい行ってしまい、感染。それを理由に「解雇」を言い渡されることは、仕方がないのでしょうか?

   会社の就業規則などによって、「業務命令に違反した場合には解雇する」などの懲戒解雇の規定が置かれていることは多いですね。

   ただ、ご質問のようなケースの場合、懲戒解雇は認められない可能性が高いと考えます。

   まず、ナイトクラブやスナック、バーへの立ち入り禁止命令は、業務内容に関するものとは言い難く、この命令に違反したからといって、当然には業務命令に違反したことにはなりません。

   そのため、そもそも業務命令に違反したとは認め難く、懲戒事由に該当しないものとして、解雇自体無効と判断される可能性が高いと言えそうです。

   もっとも労働者には、労働契約に付随する義務として、労務の提供に支障をきたさないよう、注意する義務を負っていると考えられます。

   そのため、会社の命令に反してコロナ感染の防止のための措置をまったくとらず、それによりコロナウイルスに感染したことによって会社に損害が生じたといえるような場合、損害賠償責任を負う可能性はゼロではありません。

   つまり、解雇が認められる可能性は低く、仮に解雇を言い渡されても、解雇無効を争うことができるでしょう。

取引先に接待されたお店で感染したら......

   では、取引先に接待されて行ったお店で新型コロナウイルスに感染した場合、その取引先に対して、あるいはお店に対して、損害賠償は請求できるのでしょうか?

   理屈のうえでは、一定の要件を満たす場合、損害賠償を請求することはできますが、実際に損害賠償請求が認められるケースは稀だと考えます。

   取引先を接待する際には、その取引先の従業員の健康を害することがないよう注意する義務を負っているものと考えられます(民法1条2項)。

   そのため、新型コロナウイルスに感染させないよう、十分な注意を払わなかったことにより、取引先の従業員が新型コロナウイルスに感染した場合、それによって生じた損害を賠償する責任を負う可能性があります。

   また、意図的にまたは不注意で取引先の従業員を、新型コロナに感染させた場合、不法行為(民法709条)として、それにより生じた損害について賠償する責任を負う可能性があります。

   とはいえ、通常はこのようなケースは想定し難く、実際に損害賠償請求できるケースは稀といえます。  では、なぜ「稀」なのでしょう――。それは、この接待によって新型コロナウイルスに感染したことを証明することは困難であり、接待したことと、新型コロナウイルスによる損害とのあいだの因果関係が認められない結果となりますから、損害賠償請求が認められないことがほとんどとなるでしょう。

   また、もし感染源となったお店が意図的に感染させたり、感染者が出ていたりしたにもかかわらず、消毒や、感染者や濃厚接触者の自宅待機などの感染防止策をとらずに営業していたような場合でない限り、そのお店に損害賠償を請求することはできないものと考えます。



◆ 今週の当番弁護士 プロフィール

井上圭章(いのうえ・よしあき)
グラディアトル法律事務所所属
九州国際大学法学部卒業後、京都産業大学法科大学院修了。「労働問題」「男女トラブル」「債権回収」「不動産トラブル」などを得意分野とする。
労働問題に関する相談(https://labor.gladiator.jp/)。

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グラディアトル法律事務所
平均年齢30代前半の若手弁護士の精鋭集団。最新の法律知識やツールを駆使し、それぞれの得意分野を生かしながら、チーム一丸となって問題解決に取り組む。取扱分野は多岐にわたり、特殊な分野を除き、ほぼあらゆる法律問題をカバーしている。
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